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足腰の強さみせた十勝農業(畑作) 農業TOKACHI

天候不順で収量が伸びなかった小麦。収穫時期に雨がなかったのが救いだった

<小麦>
細麦傾向で前年の3割減品質は良く最低は免れる

 小麦の収量は6月以降の天候不順により落ち込みそうだ。管内で作付けが最も多い品種「きたほなみ」の栽培が本格的に始まった2011年以降で見ると、16年に次ぐ少なさになる見込み。

 管内の小麦の9割以上を取り扱うホクレンによると、18年産の販売量は豊作だった前年を29.2%下回る17万トンとなる見通し。内訳は中力品種の「きたほなみ」が28.1%減の16万1000トン、超強力の「ゆめちから」が38.5%減の8000トンなど。

ホクレンの十勝産小麦取扱量

 今年は、6月までは天候に恵まれ順調に生育したが、以降は低温と雨が続き、受粉が進まなかった。実がしっかりと膨らまない「細麦(さいばく)」傾向となり、規格外の小麦も多くなった。

 ただ、7月から8月は雨が降らず、収穫作業は順調に進んだ。穂発芽や赤カビ病も発生しなかったため品質は良かった。収穫時の好天に救われ、11年以降で最低だった13万3000トンを記録した16年までには至らずに済んだ。

小ぶりなものが目立ったジャガイモ。収量は平年を若干下回りそう

<ジャガイモ>
小ぶり傾向だが影響は小さくとどまる

 今年産のジャガイモは、他の作物に比べ天候不順の影響は大きくなかったが、小ぶりなものが多かった。

 植え付け作業は、途中雨に見舞われたものの、好天で作業開始が早かったため、平年比で1日早く終了した。6月の天候悪化により生育が若干遅れて推移したが、収穫は平年並みの時期にスタート。天候が良かったため順調に進み、平年より3日早く収穫を終えた。

 1個20グラム以上の「上いも」の数は平年並みだったものの、1個当たりの重さはやや軽く、小さいイモが目立った。収量はやや平年を下回る程度で、小麦や豆類の落ち込みを、ビートとともに下支えすることになりそうだ。

収量は豊作だった昨年を下回るが、糖度への期待が高まるビート

<ビート>
天候不順はねのけ収量確保 糖度の高さにも期待

 他の作物が天候不順の影響を受ける中、ビートは比較的順調な生育だった。収量は平年並みを確保できそうな見通しだ。

 道農政部のまとめでは、2018年産の生産見込み数量は154万トン。天候不良の影響を受けたものの、生育は終始平年より早い状態で推移した。収量は大豊作だった17年実績と比べると15%少なくなる見込みだが、十勝と並んで生産が盛んなオホーツクを今年も上回る見通しで、生産量全道トップの座を維持できそうだ。

 ビートの質の良しあしを左右する糖度は、昨年、2年ぶりに17%台に乗った。豊作だったことも後押しし、製糖量は30万1800トンと、9年ぶりに30万トンを上回った。

 今年も10月中旬から収穫と製糖作業が始まっているが、秋口の寒暖差が大きかった。糖度が高まりやすい気象状況だったため、関係者は昨年並みの糖度になることを期待している。

天候不順の影響が大きかった豆類。小豆価格は高い傾向

<豆類>
生育挽回できず厳しい見通し 品薄・高値で消費者離れの心配

 豆類は6月以降の天候不順の影響が特に大きかった。最後まで生育状況を挽回することができず、厳しい年となった。

 豆類の播種(はしゅ)は5月中旬に始まり、主要な畑作物の中では最後。直後に低温や日照不足に見舞われ、初期生育を確保できなかった。収量の目安となるさやの数は平年の8割~9割にとどまり、最後まで少ないままだった。

 十勝が国産の6割を生産する小豆は作付面積が減少傾向の中で、2016年の台風で不作となった。以降品薄状態が続いており、今年産の収量も厳しい見通しだ。

 こうした状況を受けて、10月には1俵(60キロ)当たりの価格が2万5000円と、14年ぶりの高値となった。和菓子などで十勝産小豆の需要は高いが、生産者からはこのまま品薄状態で高値が続けば消費者が遠のいてしまうと心配する声も聞かれる。

今年のナガイモはやや小ぶりだが品質は良い

<ナガイモ>
18年産は作付け増加 農家の所得向上に期待

 管内を代表するブランド農作物としてすっかり定着した「十勝川西長いも」。2018年は管内9JAで268戸の農家が作付けし、作付面積は561ヘクタールと17年から約20ヘクタール増えた。農家数の多いJA帯広かわにし、JAめむろを中心に農家の生産意欲は高い。

 JA帯広かわにしが10月に実施した今年産ナガイモの作況調査では、6月の天候不順で生育が遅れて平年よりやや小ぶりのものが目立った。10アール当たりの収量は17年産を下回りそうだ。ただ秋口の寒暖差で成熟が進み、糖度は高く、粘り気もあるという。各農家は今秋と来春の2回に分けて収穫、全国に出荷する。

 また今年8月には、JA帯広かわにしの別府事業所に冷凍とろろ工場が完成した。そのままでは出荷が難しい「規格外品」のナガイモを原料に冷凍とろろを生産する。規格外品を有効活用できるようになり、農家の所得向上が見込める。

 新工場は埼玉県のマルコーフーズ子会社が運営し、年間1000トンの冷凍とろろを生産する計画。輸出も視野に入れている。

 十勝川西長いもは既に米西海岸や台湾、シンガポールなどに輸出されており、健康食材として人気だ。これに冷凍とろろが加われば、十勝産ナガイモのブランド力がより高まりそうだ。

地域団体商標に登録され、ブランド化に弾みがつく

<枝豆>
地域団体商標に登録 学校給食にも広く提供

 JA中札内村が栽培に力を入れる枝豆もブランド農作物だ。今年8月、国が「中札内村えだ豆」として地域団体商標に登録した。管内では「十勝川西長いも」や「大正メークイン」などに続いて12件目となる。

 今年の収穫は8月下旬に始まった。9月の胆振東部地震による停電で加工処理施設が一時稼働できなくなったが、その後は遅れを取り戻した。今年は約6000トンの収量を見込み、実が多く、質も良いという。

 JA中札内村は鮮度に徹底的にこだわり、収穫から3時間以内にゆでて塩漬けにし、瞬間冷凍する。これによって枝豆本来の色味や食味を維持できるからだ。

 このため収穫から輸送までの時間短縮に知恵を絞っている。ほ場に入る農道を整備したり、ほ場内にハーベスターの旋回スペースを確保したりしている。

 同JAは独自の安全基準も設け、残留農薬の有無を厳しく検査する。収穫前に全ほ場でサンプル採取するほか、加工処理施設でも残留農薬検査を実施する。

 こうした「安全・安心」への取り組みが評価され、中札内産枝豆は全国の小売店にとどまらず、学校給食でも広く採用されている。今後は輸出にも力を入れていく考えだ。


◆十勝農業の1年を総括
農業TOKACHI2018-十勝毎日新聞電子版特設ページ

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