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検証~台風の爪痕「避難勧告、情報届かず」

ドコモの緊急速報「エリアメール」の受信画面。多くの人に避難情報を伝える手段となったが、課題も残った

広報車頼り限界
緊急メールは送信ミスも

 台風10号による避難では、行政から住民への情報伝達の課題が浮き彫りとなった。豪雨で広報車からの呼び掛けが聞こえず、深夜で寝ている人も多いなど、誘導がスムーズに進まなかった市町村も多かった。携帯電話への「緊急速報メール」の送信も、自治体によって対応が分かれた。

 「豪雨で広報車のアナウンスが聞こえなかった」「テレビやホームページは深夜なので見ていなかった」。各地で避難した住民からは、こうした声が多く聞かれた。

 芽室町の芽室川周辺では383世帯に午前0時半に避難勧告、同1時13分に避難指示が出たが、情報が伝わり切らず、冠水後に自衛隊と消防団がボートで212人を救助した。帯広市は広報車や消防車最大11台を投入したが、対象が広範囲で各地域1度しか巡回できなかった。

情報伝達を工夫し、避難率を上げた幕別町札内北町第二公区の住民(8月31日午前1時ごろ、札内中学校体育館で)

住民組織が動く 
 避難勧告時、行政任せにせず、住民が積極的に避難を呼び掛けた町内会もある。幕別の札内北町第二公区は、あらかじめ要支援者などをまとめたチェックリストを基に、公区役員がエリアごとに分かれ避難を呼び掛けた。「スムーズに避難できた」と話す住民もいたが、下山一志公区長(53)は「段取りが十分できておらず、苦労した。事前に打ち合わせておくことが大事」と、避難所で話した。

マニュアル不備
 
 避難伝達に自治体や町内会が苦労する中、多くの人が見たのが、対象エリアの全携帯電話に自治体が避難情報を配信する「緊急速報メール」だ。音が出ないモードにしていても大きな音が鳴り、自治体の避難情報が画面に表示された。NTTドコモでは伝送路が被災し、新得、清水では受信できない状況もあったが、スマートフォンが普及する中、多くの人に情報を伝える手段となった。

 ただ、一部自治体では送信手順で混乱も起きた。帯広市はマニュアルの不備で、ソフトバンク、auの携帯に送信できず、ドコモ1社のみの送信に。送信時間も避難準備情報発令の2時間半後と遅れた。幕別町はパソコンの操作ミスで、登録した人のみに送信される「防災情報メール」しか送られていなかった。

 芽室町では緊急速報メール自体を活用しなかった。理由は「被災エリアが限られており、対象者に的確に情報提供をするため、広報車や街頭放送によるアナウンス、戸別訪問などを優先した」(総務課)。

 緊急速報メールは設定で受信しないよう変更できるが知られておらず、携帯電話会社に対象地域外の住民から「うるさい」といった苦情も寄せられた。行政担当者から「発信するための最後のクリックは相当ちゅうちょした」(帯広市総務課)との声もあり、今後の活用方法を各自治体で精査することが必要となる。
(眞尾敦、澤村真理子、丹羽恭太)

<緊急速報メール> 
 気象庁の緊急地震速報、津波警報、気象の特別警報、国や地方自治体の災害・避難情報を受信できる。スマートフォンでは1度画面から消しても、「災害用キット」(ドコモの「エリアメール」の場合)などのアプリで見直すことができる。一部の携帯電話は、受信しない初期設定になっていることもある。ドコモでは、十勝は現在準備中の陸別町を除き全市町村が送信できる。

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