18歳選挙権~政治は身近ですか(1)「政治意識」
一票の価値 実感なく
「政治に関心がないわけではない。でも、誰に投票していいのか分からない。だから、参院選は投票しないと思う」。初めて選挙権を得る帯広大谷短期大学1年の井脇史絵さん(18)は冷静に語る。
この考えは、十勝毎日新聞社が同短大と帯広コア専門学校の1年生162人に対し、また帯広柏葉高校新聞局が同校生徒836人に行ったそれぞれのアンケートからもうかがえる。ともに約7割が参院選で投票するとしたが、道選挙区(改選定数3)の立候補予定者については約9割が「誰も知らない」と回答した。
柏葉高新聞局3年の鑓水祐輔さん(17)は「選挙といっても、具体的に何をすればよいのか分からない人が多いのでは。このままでは、投票に行くと答えた人の中でも棄権が増えるだろう」と分析する。同局は参院選後に追跡調査し、実際の投票率を確認する考えだ。
両アンケートでは関心ある政治課題について、消費増税や安保法制、少子化対策が上位を占めた。同短大では約4割が奨学金を利用しているが、奨学金返済問題を選んだ人は少なかった。関係者は「自分の生活と政治が密接に関わっていることに気付いていない学生も多い」と指摘する。
「周りに流されるかも」
ただ、政治課題への意識が投票の判断基準になるかは未知数だ。同短大1年の渡紗耶加さん(18)は「親や友達など周りの意見に流されるかも」と口にする。別の学生は、親が応援していた政治家が逮捕された経験から、「政治家には悪い印象しかない。私が選んだ人が不祥事を起こしたら責任が取れない」と投票にちゅうちょする。
印象に残る政治家を尋ねたアンケートからも、若年層の意識が透けて見える。露出度の高い安倍晋三首相が圧倒的な得票を集めたが、それに続くのは政治資金の公私混同問題で辞職に追い込まれた舛添要一東京都知事と、号泣会見が話題になった野々村竜太郎元兵庫県議。「テレビの影響が強い。これでは政治に期待できない」と、関係者は嘆く。十勝関連の政治家は上位5位に入らなかった。
「政治が私たちの生活や将来に役立つのか、実感はない。一票に価値を見いだせない」。複数の学生は異口同音に語る。この疑問に、政治は参院選を通じてどんな答えを出し、若年層はどのような意思を示すのか、注目される。
(池谷智仁)
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選挙権年齢が、これまでの「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる参院選(22日公示、7月10日投開票)。新たに投票権を得る若者の政治意識や、教育現場の苦悩、一票の重みなどを探る。
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