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おっとり人気者、思い出ありがとう 動物園のカバ「ダイ」

むし歯予防デーに合わせて公開されたダイの歯磨き(2009年)

 おびひろ動物園(柚原和敏園長)で24日に死んだカバの「ダイ」(雄、47歳)は、生涯のうち44年間を同園で過ごした。同園ではゾウの「ナナ」(雌、55歳)に次ぐ古株で、幅広い世代の来園者に愛され続けた。人気者だったダイ。その日々は飼育関係者らにもたくさんの思い出を残した。

子どもと初顔合わせしたダイ(右)。うれしそうな表情(1977年)

 ダイは1969年1月29日に韓国で生まれ、72年8月、3歳のときにフェリーで来日した。同園で41年間、飼育係を務めた伊藤眞實(なおみ)さん(69)=帯広=は釧路から車での移送作業に立ち会い、「とにかく無事に連れて行く、その思いだけだった」。長旅を経て到着したダイは船酔いがひどく、ぐったりした様子だったという。

 同園には、ダイより3年早く仲間入りした「モグ」(雌、2005年死亡)が暮らしていた。モグはマイペースな性格で、71年には当時のカバ舎から“脱走”したことも。園舎が狭かったこともあり、ダイの来園に合わせて同年、現在のカバ舎が新設された。

 そんな「おてんば」な一面も持つモグとおっとりしたダイは、74~81年に6頭の子宝に恵まれた。4頭は間もなく死んだが、75年生まれの「ノロ」(雄)は宇都宮動物園に、81年生まれの「パク」(雄)は韓国へ数年後に送り出された。

 カバの赤ちゃんは「ムーミンそのままだった」(伊藤さん)。来園者に祝福され、多くの愛情を受けて育った。親子むつまじく昼寝をする当時の写真には、3頭が幸せそうに寄り添っている。

 カバはもともと温暖な地域で暮らす動物のため、帯広の厳しい寒さを乗り切る対策も施された。冬場の乾燥による霜焼けや肌のひび割れは命にも関わることから、飼育係が丹念にワセリンを塗った。

子ども(中央)を囲み、親子3人で水入らず(1979年、右がダイ、左がモグ)

 夏には緑色のあかをデッキブラシでこすった。「ダイは気持ち良さそうな様子でじっとしていた」と、85年から同園に勤務する柚原園長。09年からはむし歯予防デー(6月4日)に合わせ、デッキブラシなどを使ってダイの「歯磨き」も。こうしたことができたのも、飼育係との信頼関係があってこそだった。

 晩年のダイは、コンクリートの床で日光浴をして過ごすことが多かった。「口が重いのか、壁に顎をくっつけて楽な体勢を取っていた」(柚原園長)。若いときは体中から出ていたカバ特有の赤い汗も、次第に少なくなった。05年にモグが死んでからは鳴き合う相手もいなくなり、のんびり気ままに日々を送った。
 長年、ダイと関わった伊藤さんは「とても長生きしてくれた。たくさんの思い出をくれた」といい、柚原園長も「顔を見るといつも安心した。多くのお客さんに愛されていたのを感じる」と振り返る。

 園内に設けられたダイの献花台には、25日以降、たくさんの感謝の手紙や花が届いた。「長い間、本当にありがとう」。献花した来園者が、空っぽになったカバ舎に語り掛けた。(松田亜弓)


◆おびひろ動物園について
おびひろ動物園-公式ホームページ
おびひろ動物園飼育係ブログ-公式ブログ
おびひろ動物園探検隊-十勝毎日新聞電子版

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