もっと牧草サイレージを食べさせよう -繊維消化速度を考慮した飼料設計―
道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ
1.試験のねらい
飼料自給率の向上を目指し、イネ科主体牧草サイレージ(GS)の中性デタージェント繊維(NDF)消化速度と泌乳牛の乾物およびNDF摂取量の関係を明らかにするとともに、NDF消化速度の簡易な推定法を提示する。
2.試験の方法
1 )GS1番草8点(NDF消化速度3.70~5.16%/h)を用い、飼料全体のNDF含量を40%DMとし、泌乳中期の泌乳牛8頭による1期21日間の給与試験を行い、NDF消化速度と摂取量の関係を明らかにする。
2 )GS1番草40点、GS2番草20点を供試し、ルーメンカニューレを装着した乾乳牛4頭を用いたナイロンバック法によりNDF消化速度を測定し、化学成分からのNDF消化速度の推定法を提示する。NDF消化速度の計算はMertens & Loften(1980)に準じる。
3)推定式で求めたNDF消化速度と摂取量の関係を場内の泌乳牛群で検証する。
4 )NDF消化速度の変更に伴う飼料設計の変化をCPM-Dairy ver.3で試算するとともに、TMRセンター利用農家4戸において、NDF消化速度を考慮した飼料設計の利用事例を調査する。
3.成果の概要
1 )飼料中のNDF含量を一定にした場合、GSのNDF消化速度が高いほど、体重当たりの乾物摂取量は増加する傾向にある(図1)。NDF消化速度が1ポイント高まると体重当たりのGS摂取量は0.34%、NDF摂取量は0.12%増加する関係にあり、NDF消化速度が5.0%/h以上のGS給与時には体重当たりのNDF摂取量は1.4%まで高まる。
2 )GS1番草のNDF消化速度は3.62~5.35%/ h、2番草は3.93~5.43%/hの範囲にある(表1)。GS1番草では、NDF消化速度は粗タンパク質(CP)と正の相関、低消化性繊維(Ob)と負の相関関係にあり、以下の式によりGS1番草のNDF消化速度を推定できる。
NDF消化速度(%/h)=8.267+0.057×CP-0.074×Ob(R2=0.67、P<0.01)
GS2番草では、化学成分とNDF消化速度の相関係数が低い。
3 )推定式から求めたNDF消化速度は、デフォルト値に比べ実測値に近い値である(表2)。推定NDF消化速度が3.77%/hのとき体重当たりのGS摂取量は1.6%だが、4.64%/hではGS摂取量は2.1%に高まる。
4 )GS1番草を主体とした飼料構成で飼料設計を行ったとき、NDF消化速度が0.50%/h高まるごとに、飼料中GS割合が乾物比2ポイント増加し、濃厚飼料費が約28円/頭/日低減すると試算される。現地利用事例において、NDF消化速度をCPM-Dairy のデフォルト値から推定値に変えると、飼料中のGS1番草および粗飼料の割合はやや増加するが、設計変更前後で乾物摂取量および乳量の低下はみられない(表3)。
4.留意点
1)牧草サイレージ割合を高めた泌乳牛の飼料設計を行う際に活用できる。
2)NDF消化速度の推定式および泌乳牛の摂取量との関係は、牧草サイレージ1番草で得られた結果である。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ 谷川 珠子
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