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黒毛和種去勢牛の育成期における 牧草サイレージ給与技術

道総研畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ

1.試験のねらい
 黒毛和種去勢牛の育成期における牧草サイレージ(GS)給与による発育低下、体型悪化、肥育時のビタミンAコントロールに対する影響や枝肉脂肪の黄色化等の懸念を払拭し、GSを活用した育成技術を確立することを目的とし、高水分GSを用いてGSの給与開始時期と飼料摂取量、発育、ビタミンA代謝、産肉成績の関連を明らかにする。

2.試験の方法
1)GSの給与開始時期と発育および肥育成績の関連について検討し、適切な切り替え時期を提示する。
  対照区:6頭(切断乾草)、GS4区:6頭(4か月齢からGS)、GS5区:6頭(5か月齢からGS)
  飼料成分: 乾草;DM86.1%、CP7.9%DM、TDN56.7%DM、GS;DM23.4%、CP13.7%DM、TDN69.3%DM。肥育期は、全処理で乾草または麦稈と肥育用配合飼料を給与

2 )同一圃場で同じ日に収穫、調製した乾草およびGSを4か月齢から給与し、飼料中のタンパク質水準を同一としたときの飼料摂取量、発育、血液性状および産肉成績に及ぼす影響を明らかにする。
  対照区:8頭(切断乾草+ 育成用配合飼料)、GS区:8頭(細切GS+配合飼料+ 圧ぺんとうもろこし)
  飼料成分: 乾草;DM83.5%、CP11.9%DM、TDN62.6%DM GS; DM18.8%、CP13.7%DM、TDN69.3%DM。飼料中CP含量は16%DMとなるように設定。肥育期の管理は試験1と同様。

3 )乳肉複合経営の黒毛和種農家における育成牛への牧草サイレージ給与の現地実証を行い、発育、腹部形状および市場価格について明らかにする。

4)黒毛和種去勢牛の育成期における牧草サイレージ給与マニュアルを作成する。

3.成果の概要
1 )GSの給与による乾物摂取量の低下はみられず、給与開始時期の違いによる増体、腹部形状および血中ビタミンA濃度の差はみられなかった(表1の試験1)。また、GS給与により育成前期に糞便が軟らかくなったが、乾物摂取量および増体の低下はみられなかった。育成期にGSを給与しても肥育前期に乾草、中後期に麦稈を給与することで、ビタミンA濃度を適正範囲にコントロールすることが可能であった(図1)。
肥育成績に処理間で差はなく、枝肉脂肪の黄色化は生じなかった。これらのことから、GSの給与は4か月齢から可能であると考えられた。

2 )育成期の増体、腹部形状および血中ビタミンA濃度に処理間で差はみられなかった(表1の試験2)。また、GS給与により育成前期に糞便が軟らかくなったが、乾物摂取量および増体の低下はみられなかった。肥育成績にも処理間で差はみられず、枝肉脂肪の黄色化は生じなかった。GS給与時では、併給する濃厚飼料の原物中CP含量を乾草給与時の18%から16%まで低減でき、飼料費は乾草給与と比べ9,115円安く、16%の削減となった。

3 )雌および去勢ともに乾草給与に劣らない増体を示し、去勢の300㎏到達日齢は257日と良好な発育であった(表2)。GSを給与した牛の子牛市場価格は市場平均を上回り、GS給与による負の影響はみられなかった。

4)試験1および2の結果を基に、GSの給与マニュアルを作成した(図2)。

4.留意点
1)本成果は高水分牧草サイレージを給与した結果であるが、低水分・中水分牧草サイレージにも活用できる。






詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ 遠藤 哲代
電話(0156)64-0610  FAX(0156)64-3212
E-mail:endou-tetusiro@hro.or.jp

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