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子宮内膜炎の予防が繁殖成績を上げる近道

道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ

1.試験のねらい
 子宮内膜炎(子宮の内膜が炎症を起こす病気)は乳牛の繁殖性を低下させる主要因の一つとされているが、農場における発生実態や発生要因については解明が進んでいない。また効果的な治療法が確立されていないため、その予防が重要である。本試験では、酪農場における子宮内膜炎の発生実態および子宮内膜炎の発生要因を明らかにし、予防指針を作成する。

2.試験の方法
1 )分娩後6週目における子宮内膜炎の診断基準について検討するために、北海道根室管内の9酪農場において、分娩後6週目に子宮の検査(粘液、超音波検査および子宮内膜細胞診)を行ない、それらの結果と繁殖成績の関係を調べた。

2 )子宮内膜炎の発生実態および発生要因を明らかにするために、上記農場において、分娩前2週から分娩後6週目まで、飼養牛の分娩状況、健康状態などを調査し、分娩後6週目における子宮内膜炎の発生状況との関係を調べた。

3 )調査農場における子宮内膜炎の発生状況と飼養管理状況との関係を調べるため、飼養管理方法の聞き取り調査を行なった。

4)子宮内膜炎予防のための指針を、農場調査の結果をもとに作成した。

3.成果の概要
1 )分娩後6週目に、①超音波検査で子宮内に多量の貯留物が認められた、または②子宮内膜細胞診で子宮内から回収した細胞中に好中球が5%以上存在していた、のいずれかを満たした場合に子宮内膜炎と判断するのが妥当であることを示した。(データ略)。

2 )分娩後6週目における子宮内膜炎の発生率は40%(30~57%)であり、それらの発生率は農場により異なっていた(図1)。

3 )子宮内膜炎の発生要因は、分娩前2週の飼料摂取量不足、乾乳後期の過肥、胎盤停滞の発生、第四胃変位の治療、子宮炎の発生、分娩後の削痩であった。それらの発生に影響する要因は、分娩前2週以内の牛群変更、分娩後1週目の潜在的な代謝病(低カルシウム状態、高遊離脂肪酸)、産褥期の飼料摂取量不足であった。これらの結果から、子宮内膜炎の発生に至る経路を整理した(図2)。

4 )子宮内膜炎の発生率が40%を超えた農場では、分娩前2週以内の牛群の変更、分娩時の拘束、分娩介助、難産および胎盤停滞の多発、分娩後1週目の低カルシウム状態、代謝病の多発、乾乳期の過肥および分娩後の削痩、分娩前後の飼料摂取量不足などの特徴が認められた(表1)。

5 )分娩後6週目の子宮内膜炎発生率が40%、または分娩後3週目の子宮炎発生率が40%を超える農場において活用する子宮内膜炎の予防指針を作成した(図3)。

4.留意点
1)繁殖成績の改善が必要な酪農場において、子宮内膜炎が多発している場合に活用する。
2)本試験で用いた子宮内膜細胞診の検査器具は自作品である。






詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ 小山  毅
電話(0153)72-2004  FAX(0153)73-5329
E-mail:koyama-takeshi@hro.or.jp

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