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創造センター 支える村民ボランティア まちマイ中札内編

200近いつまみがある調光卓を操作し、さまざまな照明のパターンを作る小山代表

 中札内は「アートの村」。あちらこちらから芸術・文化の薫りが漂ってくる。村で文化的な活動に取り組む人たちを紹介する。

 ボランティア感動づくりに一役 Be-in倶楽部
 コンサートや演劇、落語などを開いている中札内村文化創造センター。その照明や音響操作は、一般の村民でつくる「Be-in倶楽部」(小山秀樹代表)が担っている。プロの業者以外が携わるのは珍しいが、村民の息抜きづくりに協力したいと、ほとんどボランティアで年間40を超える催しの演出を支えている。

 1997年にセンターが完成した際、村教委に小山代表(54)が協力したいと申し出たことが委託を受けたきっかけ。小山代表は短大生のときにコンサート会場の設営アルバイトを通して演劇や音楽に興味を持ち、出演者を手伝いたいとの思いもあって手を挙げた。
 村としても村内の団体に委託し、地域密着の施設として運営する考えだったため申し出を受けた。小山さんは有志を募って倶楽部を立ち上げたが、メンバーは農家や主婦、会社員で小山代表も畑作農家。音響や照明技術に関しては素人で「機械の操作や専門用語は全く分からなかった」という。
 初めの1、2年は専門業者の補助を行い、その傍ら北海道文化財団などの研修に参加し技術を学んだ。今では村からの委託を受けて15年が経ち、開かれる催しのほとんどを担当。「利用者の要望に丁寧に応えてもらっている」と村からの信頼も厚い。
 素人のボランティアといえども舞台づくりに手を抜くわけではない。小山代表は「舞台はチームプレー。出演者と裏方が一つにならないと感動は与えられない」と仕事の合間を縫う作業ながら、入念な打ち合わせと音響、照明のセッティング、リハーサルを行い本番に臨む。
 年間80日は舞台づくりに携わり「どっちが本業か分からない」と小山代表。プロにも負けない熱意が中札内村民の文化・芸能に触れる「場所」づくりを支えている。(伊藤亮太)

 

芽室町の新嵐山スカイパークで19日に開かれたイベントに出店した「チームヤムヤム」。右から野乃ちゃん、橙ちゃん、学さん、えり奈さん

群馬から移住…山本さん夫妻「チームヤムヤム」
 デザインや編集「風吹くままに」
 群馬県から3年前に移住してきた山本学さん(38)、えり奈さん(39)夫妻。「チームヤムヤム」としてイラストデザインや編集などを手掛けながら、中札内ライフを楽しむ。
 大学の同級生の2人は3年前、長女野乃ちゃん(6)と3人でキャンプ旅行の途中で来村。居心地の良さにそのまま居着いてしまった。間もなく長男橙ちゃん(2)が生まれ、家族4人で暮らす。国内外を旅して回っていた2人にとって、「自然の豊かさや水のきれいさ、食べ物のおいしさ、ほどよい人の数など、『ここに住みたい』と思わせる要素が村に集まっていた」
 群馬では出版社関係の仕事が多かったが、村に来てからは、農家が作る商品のラベルデザインや、観光パンフレット作製など仕事の幅が広がった。北海道の酒のさかなで五十音を覚える「あいうえおつまみ表」や、十勝の冬を楽しむためのカレンダー「十勝雪暦」などは各地の書店や新千歳空港でも販売している。
 今夏は各地のイベントに出店して、顔や腕などにイラストを描く「フェイスペイント」に精力的に取り組む。学さんは「昨年の今ごろは、イベントに出ているなんて想像もしなかった。こっちに来てから、個人のつながりで仕事や友人がどんどん広がっていくことに驚いている」と話す。
 「風の吹くまま気の向くまま」を地で行く2人をイベント会場で見ると、終わればまた旅に出る旅芸人かサーカス一座のよう。「中札内には旅しているような気分で住んでいて、移動しなくても旅心が満たされている」と口をそろえ、「来年はきっと、今は考えてもいない楽しいことになっているのでは」と、新しい出会いに期待している。(丹羽恭太)

 

自宅兼アトリエで製作に没頭する藤原千也教諭

中札内高等養護学校の藤原さん 昼は教諭、夜は彫刻
 「いつも心は自由に」個展も開催
 中札内高等養護学校(西村泉校長、生徒154人)の藤原千也教諭(35)は、彫刻家としての顔も合わせ持ち、学校近くの自宅兼アトリエで夜な夜な創作活動に励んでいる。「自分の価値をどう見いだし、表現するかを伝えたい」。生徒と日々真剣に向き合いながら先頭に立って走っている。
 1979年札幌市生まれ。小~高校生時代は「劣等生」で、進学した大阪芸大は「得意の美術だけで拾ってくれた」と振り返る。非常勤講師として2年間、肢体不自由校(大阪府)に勤務した20代半ばの経験が、今日の藤原教諭に大きな影響を与えたという。「大声を上げて廊下を走る知的障害の子供でも、一度ペンを与えれば私では及ばないような魅力的な絵を描く」。いつの間にか「劣等生」だったときの自分と生徒を重ね合わせて見るようになっていた。
 「子供の輝く才能を見つけたい」と、故郷の北海道に戻って教諭になり、北見市では養護学校生徒の個展を企画して約2000人を集客したことも。自身も意欲的に活動を続けており、昨年は帯広美術館で光と影をテーマにした個展「in the LIGHT/in the SHADOW」を開催した。
 「いつも心は自由であってほしい」。村赴任4年目の今年は工業科2年生の担任として日々を奮闘する。(小寺泰介)

 

優秀賞を獲得した三谷りこさん

三谷さん(中札内小6年)優秀賞スケッチ全国コンペ
 中札内小6年生の三谷りこさん(11)が自由な発想で描いたスケッチが、「木でできた冒険道具」(実行委主催)コンペティション審査会(富山県)で、全国2000点以上の作品の中から優秀賞に選ばれた。
 今年は「泣いてる赤ちゃんを笑わせる冒険」など100のリストの中から、一つを選んで絵を描く設定。小学生を対象に2366点の応募があり、最優秀賞1点、審査員賞4点、優秀賞7点が選ばれた。
 三谷さんは、村内で農業を営む祖母宅から想像を膨らませた。「川の水を運ぶ冒険」を選び、家の隣に水を吸い上げるホースとタンクを描き、豊かな創造性が評価された。
 優秀作品12点は大学生が木を用いて形にして展示する。将来は、洋服に関する仕事に就く希望があるという三谷さん。「どんなものになるのかワクワクする」と期待しながら完成を待っている。
 表彰式は8月1日、同県で行われる。
(小寺泰介)

 

花壇に水をまく火消しの壁画

庁舎にも「芸術」 消防支署に壁画
 アートの村では消防庁舎も芸術的-。南十勝消防事務組合中札内支署の西側の壁には、はっぴ姿の巨大な火消しの絵が描かれている。
 描かれたのは20年以上前の1991年のこと。前年に火災予防啓発を目的に、退役した消防車を庁舎屋上に展示したのを機に、消防車からホースを伸ばして放水する火消しを描いた。須賀裕一消防グループ主査は「遠くからも見える消防車が物珍しく、多くの車が停(と)まって見物していた」と当時を振り返る。
 老朽化や建物の強度の問題から消防車は2009年に撤去され、絵だけが今も残る。火消しが放水する先には美しい花壇。「水をまくのは花だけにして」という消防署員の願いが込められている。(丹羽恭太)










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