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波紋 貸し切りバス値上げ

運賃体系が変わった貸し切りバス。事業所から出発した時点から料金に反映されるようになった。低価格を強いられてきたバス事業者には良いが利用者の減少が懸念される(音更町然別の北海道拓殖バス駐車場で)

業者は「適正」も利用減懸念
 貸し切りバスの安全性確保の一環として、国土交通省が打ち出した運賃制度の改正による値上げが、バス事業者や利用者に波紋を広げている。値上げ幅は距離や待機時間などによって異なるが、各業者への取材によると、少なくとも1割増、多い場合では2倍以上になるとみられる。各社は「原価に適正な価格になった」とする一方、「消費増税とタイミングが重なり、需要減が心配」との声が根強い。利用客も複数社の見積もりを取るなど運賃に敏感になっており、学校の部活の遠征などに影響が出始めている。(深津慶太、関坂典生、北雅貴)

 国交省が運賃制度改正を打ち出した背景は、2012年4月に群馬県の関越自動車道で発生した高速ツアーバスの事故にある。この事故は運転手の居眠りが原因とされ、1カ月の上限を超えた長距離運転など労働環境が問題視された。

事故きっかけ ▽8月義務化
 バス業界は規制緩和により、事業者数やバス台数が大幅に増えた一方、価格競争が激化し、会社の収益は減少。国は業界の構造として、安全管理や法令順守意識の低下、届け出運賃とは異なる運賃での取引が常態化しているとして、安全コストを反映した運賃体系と厳格な運用を打ち出した。

 新運賃制度はこれまで同様に国(管内では帯広運輸支局)への届け出が必要。国が定めた1キロ当たり、1時間当たりの運賃の上限と下限の範囲内で届け出る。新運賃制度は4月から適用を開始しているが、適用の義務化は8月1日からとなる。

▽安全性向上 車両購入にも
 管内の貸し切りバス会社は今回の新運賃制度への移行について、「新しいバスの購入につながる」(毎日交通の千葉元逸社長)や「安全を加味した適正な料金になったので喜ばしい」(十勝バスの藤田昭好管理本部長)など価格競争に歯止めがかかったことに対する安堵(あんど)の声が聞かれる。

 管内のバス会社で働く60歳代の男性運転手は「昔に比べると人手が不足して、仕事の数が増えたのは確か。待遇を改善してもらい、運転手確保につなげてもらえれば」と期待する。

 だが、各社が関心を寄せるのは、値上げ幅が大きいことへの利用客の反応だ。北海道拓殖バスの工藤貴宏観光課長は「利用者がいろいろなところに問い合わせをしているようで、見積もり依頼が増えた」と話す。

見積もり増加 ▽対応策思案
 また、これまでの運賃制度では最初の乗車地点への到着から降車までが対象だったが、新制度では営業所の出庫から帰庫するまでの回送運転も対象になり、営業所での点検作業も拘束時間に加味される。工藤課長は「広尾や足寄、新得など営業所から離れた地域ほど回送分が多く、値上げ幅が大きい」と懸念する。

 毎日交通の千葉社長は「旅程を短くする、時間を短縮するなど希望額に近づける努力をしている」と話す。各社は他社の動向を気にしながら、6月末に期限が迫った新運賃の届け出に向けた対応策を練っている。

遠征費増、部活を直撃
 「運賃の値上げは遠征費の増加となり、参加する生徒の負担に響く。それぞれの家庭の事情もあり、負担できるかどうかで生徒間の格差が出てしまう可能性が心配だ」

 こう語るのは管内の公立高校サッカー部の顧問。5月に道北への日帰りの遠征を実施したが、バス会社から出てきた見積もりに驚いた。昨年は約6万円だったが、今年は約12万円と2倍に跳ね上がった。

 さらに悩みの種は高体連後に3年生が引退、部員が少なくなること。仮に同じ地域に遠征に行っても1人当たりの負担額は増える。

 また、管内の公立高校の男子バスケットボール部のヘッドコーチは「全道大会に出場すると学校から補助が出るものの、補助額は変わらない。合宿は全て個人負担となるが、ある程度遠征しないと強化できないので悩ましい」と話す。

 先のサッカー部顧問は「憤りを感じているが、バス会社の事情も分かるので責められない。国が利用者の負担を軽減する方策を打ち出してくれればいいが」と頭を抱えている。

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