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日常の裏に潜む事情描く 帯広出身の上田春雨さん 小説「飛び込め地獄」出版

宗教が題材のミステリー作品を執筆した上田春雨さん

 帯広市出身の小説家上田春雨さんは5日、2作目の小説「飛び込め地獄」(宝島社文庫、850円)を出版した。新興宗教が舞台のミステリーで、上田さんは「人間はいろいろな事情を抱え、日常生活のすぐ下には秩序立ったものがない世界が広がっている。それをのぞき見る作品」と語る。

 上田さんは1986年生まれ。帯広柏葉高、筑波大社会学類卒業。記者として新聞社に勤務する、2人の子どもを持つワーキングマザー。第22回「このミステリーがすごい!」の「大賞・隠し玉」作品として、「呪詛(じゅそ)を受信しました」で昨年7月にデビューした。

 今作は、新興宗教の教祖だった姉が失踪し、主人公の女子高校生が教団から次期教祖になるよう迫られながら、姉を捜索する場面から作品は始まる。「ハリウッド映画のような疾走感ある作品を書きたかった」と、殺し屋を名乗る少女との出会い、密室で変死した両親、次々と電車に飛び込む信徒などのストーリーが展開する。

2作目の小説「飛び込め地獄」

 教団の闇に迫る中、何かをひたむきに信じられることの素晴らしさも表現。「取り返しがつくものと、つかないものを対比した。生きていれば取り返しはつく」との思いを込めた。

 伏線を含めたトリックにこだわった。「適度に難易度が高く、不可能ではないラインを攻めた。本の中できれいに人を殺すため、(連鎖的にからくりが進む)『殺人ピタゴラスイッチ』を成立させたい」と話す。

 多くの人が信じる魅力を知りたいと宗教への関心が高く、小説の題材にした。帯柏葉高時代に「大学に受からせてくれたら神様仏様を信じる」と祈り合格したが、「どの神様仏様が願いを聞き入れてくれたのか分からず、今も訪ね歩いている」という。

 デビューから1年が経過し、「読んでもらうありがたさが身に染みている。期待を裏切らないという責任感が芽生えた」と振り返る。今後は新聞記者を題材にしたミステリー作品を執筆する予定。
(池谷智仁)

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