愛情深く見守る「幽霊」 主人公の妻役・賀来千香子さん~映画「おしゃべりな写真館」インタビュー(3)
鹿追町を中心とする十勝管内でロケが行われ、2月23日にシネマ太陽帯広で全国に先駆けて公開される映画「おしゃべりな写真館」。昨年12月に始まった出演者インタビューでは、主人公の妻役を演じた賀来千香子さんに、作品に懸ける思いやロケでのエピソードなどを聞いた。(杉原尚勝)
-どんな役柄か。
主人公の妻とは言っても、幽霊という役柄。夫に対してはもちろん、橋爪功さん演じる偏屈な父親にも愛が深く、夫と父の二人にもっと伝えたかったという思いを抱えている女性。姿は相手に見えず、声も届かない。そのもどかしさがあっても、重くならず、温かく見守る姿はこの作品のテイストになっている。
-十勝での撮影の思い出は。
ほかの作品でもお世話になっている藤監督がほれ込んだ鹿追ということで、とても楽しみにしていた。来てみると、やはり景色が主役で、撮れば絶対に絵になると思えた。映画を象徴する木と唇山というセットの構図もすてきだった。ロケの合間に写真をいろいろ撮った。
やはり、十勝の大地は広いなと感じた。自然の大きさや尊さは、あらがえないところがある。神がかったところもあるし、そのすごさを実感した。
-特に印象的だったエピソードは。
ロケで宿泊した然別湖畔のホテル風水で絶景を見た。ロケが押して遅くに戻り、ゆっくりお風呂に入ったら結構いい時間になってしまった。確か午前4時近く。どんな景色だろうとカーテンを開けると、目に飛び込んだのは見たこともない朝焼け。感激し、写真も動画も撮りまくり。もともと竜の雲を見たいという思いを持っていて、そこで見た雲がまさに竜。ロケの「ご褒美」と感動した。
また、ゆうなちゃん(準主演の山木雪羽那さん)が踊る冒頭のシーンに虹が映っているが、あの虹は本物。そのロケの当時は東京にいて、藤監督が「虹が出たんだ」と電話をくれた。神がかり的。良い映画を作りたいという皆さんの思いが天に届いたのだと思った。
-十勝でほかに満喫したことは。
撮影前のあいさつで伺った時に地元の方々と交流し、皆さんが「お母さん」という感じで接していただいた。「アスパラがおいしいよ」と、地の物を差し入れてくださった。応援してくださる温かさが伝わった。東京出身なので、そのぬくもりが、とてもうらやましいと思う。撮影後のご飯も手作りで、それを味わう時間を毎回楽しみにしていた。
エゾシカやキタキツネに限らず、地元でもなかなか目にできないと聞いていたナキウサギにもすぐに会えたのは貴重な経験。大自然を味わえた。また、密なスケジュールを縫って足を運んだナイタイ高原牧場でソフトクリームも食べ、スイーツも満喫できた。
-2月23日の封切りを前に思うことは。
鹿追町、帯広・十勝は本当いいところ。皆さんの地元愛がこの映画で再認識できると思う。ますます誇りに思っていただきたい。世の中では戦争があり、感染症があり、残念な事件も多い。その中で、本当に温かな優しい気持ちになれる。優しさが流れている映画なので、ぜひ劇場に足を運び、じっくり味わっていただきたい。
映画「おしゃべりな写真館」 出演者・スタッフインタビュー(3)賀来千香子さん
<かく・ちかこ>
1961年生まれ、東京都出身。女子美術短期大学在学中から、雑誌「JJ」のモデルとして芸能活動を始める。82年「白き牡丹に」で女優デビュー。以後、「男女7人夏物語」「七人の女弁護士」「ずっとあなたが好きだった」など話題作に出演。舞台「細雪」「しあわせの雨傘」「にんげん日記」「吾輩は漱石である」など。現在、「あしたも晴れ!人生レシピ」(NHK Eテレ、金曜午後8時)では司会を務め、「あなたの知らない京都旅~1200年の物語~」(BS朝日、木曜午後9時)にレギュラー旅人として出演中。