全てを面白がる男~人の気配
このコラムでは、音楽関係に限らず、さまざまな職業の友人を紹介してきた。われながらその振り幅はなかなかなものだと感じるが、今回もまた初めましての職業、お笑い芸人をひとり紹介したい。
太田プロダクションに所属する漫才コンビ「火災報知器」の小林知之さんと出会ったのは、もう10年以上前のこと。酒の席で共通の友人に紹介してもらい、乾杯をしたことを覚えている。そうやって打ち上げやクラブで友達が増えていくことはよくあるが、終電を逃した彼はその日、僕の家に泊まったのだった。「うちに泊まればいい」と確かに僕は言った。出会った日にそこまで気を許したのは、後にも先にも彼しかいない。
漫才でツッコミを担当している彼は、仕事に限らずその場を仕切るのがうまい。また、番組やイベントの構成作家もやっているので、企画力や構成力もある。実際に何度かトークショーを一緒にやって、お笑い芸人のすごさを肌で感じた。また、アウトドア雑誌「ランドネ」で連載を持つという共通点もある。彼は得意の地図読みに関するコラムを続けている。そこでの発信を、また別の番組や本の出版の仕事にもつなげているのだ。
仕事に対してはもちろん、出会った人に対しても、興味あることに関しても、とにかく面白がることにたけているのがお笑い芸人。彼を見ていてそう思う。悲しいことや恥ずかしいことも笑いに変える。そうすることで人生が良い方向に動いていく。分かっていてもなかなか難しいことを、最初は意識的に、いつからか無意識にやってきたのだろう。経験が残した良い癖である。
『Hello, New Kicks』でも歌っている。どこにいたって、何をしたって、新しい刺激に触れられるかどうかは結局、自分の心次第なのである。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。帯広柏葉高卒。Riddim Saunterを解散後、ソロ名義での活動を続ける。V6への楽曲提供が話題になるなか、ニューアルバム『Chase Af-ter』をリリース。12月9日に帯広でのライブが決まっている。