新国家資格「ペットの看護師」に足寄の三本さん合格「もっと広まって」
【足寄】今年4月に国家資格となった「愛玩動物看護師」を、十勝東北部(本別、足寄、陸別)で唯一の動物病院「犬と猫の診療所」(足寄町西町2)に勤める三本佳枝さん(54)が取得した。新資格の誕生から日が浅いため知名度はまだ低く、管内では珍しい存在。一部の医療行為や飼い主への助言などを行う「愛玩動物看護師」は、ペットの地域医療で大きな役割を担う。同診療所で20年勤める三本さんは「改めて勉強したことで、仕事の幅が広がった」と話し、資格取得者が増えていくことを願っている。(細谷敦生)
これまでは民間の認定動物看護師が獣医師をサポートしていたが、医療行為は一切できなかった。しかし獣医療の進化やペットブームによる医療ニーズの高まりを受けて、獣医師の負担軽減を目的に国家資格化された。愛玩動物看護師になると、犬や猫の採血やマイクロチップの装着など獣医師の補助、飼い主への飼育に関する指導・助言などが可能になる。
三本さんは2003年から同診療所に勤めている。それまで医療関係の助手の経験はあったが、動物とは無関係で犬や猫に触れないところから始まった。パートとして勤務を始め、獣医師の工藤安紀子さんを支えてきた。
足寄やその近隣の高齢者はペットを飼っていても病院まで連れて来ることが難しい人が多く、訪問看護や預かりなどのニーズは高い。新設された国家資格を持つことで業務の幅が広がると考え、昨年春に受験を決意。2月の本試験受験前に必要な予備試験(昨年11月)まで約半年だったが、リモート講習や問題集を使って猛勉強した。「初回の試験だから傾向や対策が分からない。専門学校に行っていたわけではないので改めて勉強して難しかった」と振り返る。
3月の合格発表は診療所の他のスタッフも見守り、合格が分かると歓喜の涙がこぼれた。工藤さんは「20年間経験を積んできたことは大きい。資格があることで患者さんの安心にもつながる。これからも日々アップデートしながら患者と接してほしい」と期待を寄せている。
これからは獣医師の指示の下で診療補助が可能になる。三本さんは「これからはペットにも地域医療、特に訪問看護が必要になる。そのためにも『愛玩動物看護師』がもっと話題になって広まってほしい。自分自身も訪問先の飼い主とゆっくり会話しながら接していきたい」と夢を語った。
農林水産省と環境省が認定する国家資格。検査機器を使った血液や尿などの検査や、獣医師の指示の下で医療行為を行う。受験は大学や専門学校の在学者、既卒者、5年以上業務を行っている現任者で形式が異なる。指定試験機関の一般財団法人動物看護師統一認定機構によると、第1回試験の受験者数は2万798人で、合格者数は1万8481人(合格率88・9%)。