33歳で医大進学、遅咲き精神科医の草場さん「患者の心の支えに」 道立緑ヶ丘病院に着任
【音更】音更町の道立緑ケ丘病院(林公人院長)に今年4月、東京都出身の草場英太医師(43)が着任した。精神科医を目指すと決めたのは派遣社員と大学院生を両立していた30代で、医師免許を取得したのは40歳。研修医時代を過ごした十勝で、患者と共に歩むことを決めた。「(適切な治療方針を患者と医療者が一緒に考える)共同意思決定の考えで寄り添いたい」と話す。(松岡秀宜)
草場医師が精神科医となるまでの歩みには、紆余(うよ)曲折があった。都内の大学に現役で合格も「面白みを感じない毎日を過ごしていた」。6年間在学したが中退し、派遣社員として生計を立てていたが、「もう一度、学び直そう」と決断。26歳で別の大学に入学した。
哲学の研究者を目指して大学院にも進学した。学業と派遣社員・家庭教師との生活を両立するが、懇意にしていた上司の子どもが親友が精神疾患で苦しむ中で、何もできない自分がいた。
こうした状況に遭遇したことで、「自分は哲学ではなく、人自体に興味があるのでは。人という存在を追求するため、精神科医に」と大学院も中退。33歳で札幌医大に進んだ。
卒業後は、帯広協会病院で初期研修医として過ごす中、脳神経外科や整形外科にも興味があったが、「人自身を診たい」とする初志を貫徹。母方の実家もあり、縁がある静岡県内で精神科医としての研さんを積み、今春、道立緑ケ丘病院の精神科医として着任した。
同病院を選んだのは、研修医時代に好印象を持った「十勝の住みやすさ」だけでなく、患者が十勝管内に加え道東圏全域やオホーツク管内など、広い地域から通院し、患者数自体も多いことが理由だ。「自分は、さまざまな経験をしてきた。だからこそ、より多くの患者さんと、二人三脚で歩むことができると思う」と話す。
将来的には、患者の人権を擁護した上で、総合的に判断し、医療保護入院や隔離、身体拘束などの行動制限や措置入院の解除判断などが行える「精神保健指定医」の取得も目指す。
「十勝で患者さんの心の支えとなりたい」。十勝に骨を埋める覚悟で、きょうも人を診る-。