人の気配「僕を照らす光のもと」
新しいアルバムをリリースした。CDやレコードがお店に並ぶのは年明けだが、最近はデジタルリリースが先になったりもするので、パソコンやスマホでは既に新作を聴くことができる。そして、新しい作品ができれば次に待っているのはリリースツアーである。今は年末に開催されるツアー準備の真っただ中。そんな気分の今だからこそ紹介したい人がいる。大阪のライブハウス「シャングリラ」で照明スタッフとして働く大橋絵里さんである。
彼女が僕を初めて照らしたのは16年ほど前。今では別のライブハウスに彼女を呼んで、乗り込みとして照明をしてもらうこともある。つまりは彼女の照明が好きなのである。
では、演者として好きな照明とはどういうものなのか。もちろん自分が作った音楽の世界観を、本当の意味で共有できているかどうかが重要なのだが、大橋さんの照明はライブ中にそれを感じることができる。光や影に気持ちを上げられている感覚。それを一度や二度ではなく何度も感じてきた。
照明ほど愛情の量が伝わってしまう職業も珍しいかもしれない。光はすごいスピードでとても強い印象を残す。少しのことで観ている人の気が散ったりもする。それを最小限に抑えながら表現をすることは、その音楽に愛情を持っていないとすぐにバレてしまう。まさにプロの仕事なのである。
これを書きながら、改めて感謝するとともに、変なプレッシャーをかけてしまっていることにも気がつき、申し訳ない思いだ。僕が言いたいのは、そうやって僕を支え続けているスタッフの存在と、彼女が僕の新しい作品をどう表現するのかが楽しみということ。これを読んでいる人も、新曲『Let Me Feel It』を聴きながら、光を想像してみてほしい。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。昨年のV6への楽曲提供が話題。12月7日にはニューアルバム『Chase After』がリリースされた。