十勝のHIV支える力に 当事者谷川さんらNGO設立
帯広市在住でエイズ患者の谷川徹さん(53)らがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性者を支援するNGO団体を立ち上げた。活動の一環として、エイズ診療拠点病院の帯広厚生病院にHIV陽性者を対象とした調査を依頼。谷川さんは「HIV陽性者のケアや性的な悩みを抱えている人のサポートなどを行いたい」と話している。
CFで支援金
谷川さんは陸別町出身で帯広光南小、帯広第三中、帯広北高を卒業。上京し、洋服店員やエアロビクスインストラクターなどを務めていた中、呼吸が苦しくなり、急激に体重が減少。医療機関を受診し、エイズ発症が判明した。28歳だった。その後、治療を続ける中、患者団体「H愛Vレッドノット」を立ち上げて活動していた。
谷川さんは発症から20年以上が経過。現在は1日1回の投薬治療のみで容体は安定しており、特に体への影響や負担はないという。
世界では新規HIV陽性者数は1990年代後半をピークに減少し、現在は年間約150万人と半減。厚生労働省エイズ動向委員会によると、2020年の新規HIV陽性者は日本で750人、北海道で17人と世界各国に比べて人口割合的には少ない。一方、日本ではHIV検査を行う人が少なく、谷川さんは「いきなりエイズの発症が分かる人が少なくない。早期発見で発症は防げる」と話す。
谷川さんは昨年12月に帯広に戻ってきたが、「患者団体がないことに驚いた」と新たな団体発足を計画。今年5月に「ザリーコ(ZARYco)ファンデーションズ」を立ち上げた。ZARYはロシア語で「思想家」などを意味する言葉を英語表記し、coは「子=女の子」の意味を込めた。
現在はサポーターを含めて7人が関与し、エイズ患者やHIV陽性者は谷川さんのみ。
帯広厚生病院には7月中旬に質問紙を送り、9月ごろまでに回答を求めている。健康状態や治療内容、通院・入院における障害、心理的サポートの有無などの項目を設けた。クラウドファンディング(CF)では調査に関する支援金を募集している。
谷川さんは同性愛者で「高校生のときにすごく悩み、苦しんだ」と振り返る。エイズ患者としては就職の取り消しなど、差別や偏見を経験した。谷川さんは立ち上げた団体で「相談員」に就任。HIVやエイズ、性的マイノリティー(LGBTなど)、性についての悩みに電話で対応する。
電話相談は0155・66・8649(平日午前9時~午後5時)へ。(松村智裕)
HIV陽性者のうち、免疫力が低下し、厚労省が診断基準で指定している23の疾病のどれか一つでも発病した時点で、エイズ発症と診断される。