「みんなのこと、書いちゃいましたよ」 池田出身95歳井村さんが自叙伝「としの百年物語」出版
【池田】池田町出身の井村利さん(95)=空知管内由仁町=が、90歳から3年がかりで執筆した自叙伝「としの百年物語」を出版した。多感な青春時代を朝鮮半島で過ごし、帰国後に結婚。3人の子どもを育て、9人の孫、17人のひ孫などに恵まれ、総勢43人の大家族に至っためくるめく足跡を明るい語り口で記している。
2010年に夫勇三さんを亡くした井村さん。次女の内倉真裕美さん(67)=恵庭市=によると、その翌年に放送されたNHK連続テレビ小説「カーネーション」を見て、「かあさんの人生も負けないくらい面白い」と言い放ったそう。90歳でこれまでの人生を振り返ることを思い立ち、原稿用紙108枚にまとめた。
井村さんは池田町で牧場を営み、町議も務めた岡野武次郎さんとフジさんの1男7女の末っ子として、1926(大正15)年誕生。6歳から19歳までを朝鮮半島の新義州で過ごした。
お手伝いさんを抱えるほど裕福だった家庭環境は、19歳で終戦を迎えると一変。朝鮮人の兵隊に自宅を乗っ取られ、北緯38度線まで家族で何とかたどり着いて帰国の途に就くなど、過酷な家族史が描かれている。
その後、やんちゃで酒好きな勇三さんと結婚。呉服店員やタイピストなど数々の仕事をこなしながら子どもたちを育て上げ、61歳で夫婦のそば屋を開業するなどの一代記となっている。
文章は内倉さんが取材しながらパソコンに打ち込み、パレード(本社大阪)から昨年11月に発行した。内倉さんは「母の記憶力には驚く。90歳になっても人は進化し続けることを思い知らされた」と話す。
四六判184ページ。計200部を通販サイト・アマゾンで限定販売している。
井村さんは現在、以前に圧迫骨折した腰を再度痛めて入院中だが、そば屋の売り上げを管理するなど井村ファミリーの大黒柱として健在だ。著書の冒頭では「天国に旅立ったみなさん、そして父さん見ていますか? わたし、みんなのこと、書いちゃいましたよ」とちゃめっ気たっぷりに記している。(松村智裕)