観音像への「参拝」続く 十勝窯表参道ギャラリー
十勝窯表参道ギャラリー(帯広市東3南4、北川美智恵代表)の店内の隅に置かれた観音像に、いつの頃からか来場者がさい銭を置いていくようになった。北川さん(82)は陶芸家だった夫祥山さんの遺志を継ぎ、1年間でたまったさい銭で福祉施設への寄付を続けている。今年は祥山さんが亡くなって10年目。北川さんは「主人が亡くなって10年たっても(観音像が)かわいがられ、お参りしてくださるのは本当にうれしい」と話している。
同ギャラリーは1995年に市西2南8から現在地に移転。ギャラリーとカフェの他、婦人向けの洋服やバッグなども扱っている。
高さ約40センチの鍋島焼の白磁観音像は祥山さんが東京の骨董(こっとう)品店で購入したものとみられる。以前は自宅の床の間に飾っていたが、移転から数年後には現在の場所に置いていたと北川さんは記憶する。
祥山さんは65年に独学で築窯。水琴窟(すいきんくつ)にヒントを得て、水滴がつぼの中に落ちて反響する音を楽しむ「壺中琴(こちゅうきん)」を手掛け、海外からも注目された。作品はオーストリアのウィーンやチェコのプラハにも寄贈した。
観音像を取り囲む高さ93センチ、幅67センチの置物は壺中琴の制作途中の素焼きの段階でひびが入ったものから作られ、正面には祥山さんが釉薬(ゆうやく)で描いた観音が描かれている。
祥山さんは生前、個展を開くたびに作品の売り上げの一部と自費で福祉施設などへの寄付を続けた。いつしか観音像の足元にさい銭が置かれるようになり、浄財を寄付するようになった。
祥山さんが亡くなった後もギャラリー来場者らの“参拝”は続き、毎年1万円以上が集まる。以前は浄財をそのまま寄付していたが、近年は「みんなが使えるものを」との思いから、寄付先に必要なものを聞いて物品を贈っている。観音像の後ろには領収書などを添付して寄付を知らせている。
北川さんは「浄財がどなたかのお役に立てるのはすごくうれしい。感謝しています」と笑顔を見せている。(澤村真理子)