浦幌でソラチコザクラの分布確認 絶滅危惧II類
【浦幌】北海道固有種で環境省レッドデータブックで絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)に分類され、日高山脈と夕張山地一帯に繁殖が限られている「ソラチコザクラ」が浦幌町内の山地に繁殖していることが分かった。帯広百年記念館の持田誠学芸調査員が現地調査などで確認した。
ソラチコザクラは、20年ほど前に町内の山歩きの愛好家が発見。盗掘を防ぐためごく一部の人にしか知られていなかった。情報を得た町民有志が種の特定や分布など学術調査が重要と考え、発見者の同意のもとに持田学芸調査員に調査を依頼した。
見つかった場所はヒグマが出没する山奥。巨大な岩壁に張り付くように生えているものや、少し湿り気のある岩の隙間に連なるように生えているものがあった。同じ岩壁にはアズマスゲ、ツルデンダなども生え、エゾオオサクラソウやエゾノキリンソウがある周辺斜面の植生とは明らかな違いがあった。
持田学芸調査員は、ソラチコザクラと確認した根拠として(1)葉の形態がへら形(2)葉の裏面が白色(3)成熟した段階での鋸(のこ)状の葉の形態-を挙げ、北大総合博物館や苫小牧市博物館などに保存されている標本や、釧路、根室地方に生えるユキワリコザクラとの形態・生育環境の比較調査などを踏まえて判断した。来春にも再調査を行う。
ユキワリソウ類は変異が多く、分類学的に難しさを抱える。持田学芸調査員は「ソラチコザクラ、ユキワリコザクラ、レブンコザクラはいずれも産地ごとの変異とも言われている。日高山脈、北見山地、根室半島の3地点をつなぐ浦幌で確認されたことは、これらの植物の分類地理学的検討をする上で非常に意義深い」と話している。(円子紳一通信員)
ソラチコザクラ サクラソウ科ユキワリソウ類の多年草。石狩川支流の空知川流域で発見されたのが名の由来。現在は夕張山地東側の空知川流域、日高地方の沙流川、新冠川流域の岩壁に生える。開花時期は5月から6月。花の色は紅紫色。草丈は3~10センチ。葉はへら形で上部が広くて縁に細かい鋸(のこ)の歯のようなぎざぎざがある。
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