元帯広市職員鈴木昭文さん、ラオスでホテル経営へ
元帯広市職員の鈴木昭文さん(61)=市内在住=が、ラオス人民民主共和国でホテル経営を計画している。かつてラオスから受け入れた留学生の家族と共に、現地での雇用創出を目的に進めている。ホテルは既に着工、早ければ来秋にも完成予定で、鈴木さんは「第二の人生をラオスの役に立てたい」と意欲を燃やしている。
鈴木さんとラオスとの出会いは5年前、同国からの留学生セントン・ケオモアンボンさん(23)のホームステイを受け入れたのがきっかけ。鈴木さんと妻葉子さん(60)にとっては、4人の子供が巣立った直後の受け入れだったこともあり、半年の滞在を通して「自分たちの息子のように感じるようになった」という。
セントンさんは少数民族のモン族の出身。モン族はベトナム戦争時に米軍に協力した歴史があり、共産主義国の同国ではいまだに要職に就くことが難しい。セントンさんも例に漏れず、学業優秀で大学院にも進学したが、卒業後の就職が見通せない状況だ。
鈴木さんは3年前にラオスでセントンさんと再会し日本から帰国後の現状を聞いた。そんな中、セントンさんの父クーさん(52)がホテル建設を計画していたが、資金が足りないことを知り、協力を申し出た。ホテルは地下1階地上3階建ての鉄筋コンクリート造り。客室数は30部屋。クーさんとの共同経営で、地域最高級のホテルを目指す。
建設地はモン族が多く住む同国中部山岳地帯シエンクワン県ポーンサワン。世界遺産認定を目指す「石壺群」や戦争遺跡などの観光資源がある。野菜や果物などが豊富で、温泉も出る。標高が高く「日本で言う軽井沢のような場所になり得る」と鈴木さんはみる。
ただ、「世界一爆弾を落とされた地域」と言われ、ベトナム戦争で米軍の激しい攻撃を受け、いまだに至る所に不発弾が残る。首都からは陸路空路ともに交通の便が悪く、農業と絹織物業以外の産業はほとんど発展していない。
ホテル経営に不利な条件もあるが、鈴木さんは「日本の技術やノウハウを活用し、ホスピタリティ(もてなし)を伝え、何とか5年程度で軌道に乗せたい。10~15人は雇用できるし、不発弾でけがをしたような人にも働く場を提供できるかもしれない。将来はセントンに任せられるようにしたい」と計画を語る。
開業後は夫婦で年に数カ月は住み込んで経営に当たる考え。鈴木さんは「私たちにとっては老後の生きがいでも、彼らにとっては生活が懸かっている。中途半端な気持ちではできない」と気を引き締める。葉子さんも「何度も訪れるうちに、セントンの家族と親戚以上の信頼関係を築け、一緒に頑張っていこうと思えた。昔の日本のような風景が広がるラオスなので、日本人にも遊びに来てもらえるようにしたい」と意気込んでいる。(丹羽恭太)
◆ラオス シエンクワン県ポーンサワン(地図)
・ポーンサワン周辺のエリア(グーグルアース)-グーグルマップ