苦闘の1年4カ月「新キリン館」への引っ越し成功! 飼育係片桐さんの努力実る
おびひろ動物園(渡邊誠克園長)は、6日に始まる冬季開園から「新キリン館」でのキリンの屋内展示を開始する。昨年8月に完成した同館は、2階から観察できるガラス張りの屋内展示室を全国で初めて備え、冬や悪天候でも快適な観覧を可能にした。ただ、キリンの強い警戒心から引っ越しに苦闘。同館の環境にならす訓練を繰り返し、1年4カ月越しとなる待望の一般公開にたどり着いた。(貞野真生)
同園では、メープル(雄、11歳)とユルリ(雌、8歳)、その子のユメタ(雄、3歳)の3頭のキリンを飼育している。昨年9月から同館への引っ越し訓練を始め、比較的物おじしない性格のメープルは同月中に出入りできるようになった。一方、慎重な性格のユルリやユメタは中の様子をうかがうまで2、3週間、前脚が入るまでまた2週間と、一進一退の訓練が続いた。
時間かけて訓練
冬は旧キリン舎で過ごし、今年4月から訓練を再開。餌を少しずつ入り口から中へずらし、入る回数を増やした。夏ごろには部屋の中でUターンできるようになり、メープルも含めた3頭が、なれの指標とする完全に扉を閉じることに成功したのは9月中旬だった。
展示室での公開を見据え、誤ってガラスに突っ込まないよう、ガラスをスクリーンで隠して部分的に開けることを繰り返すなどの訓練を重ねた。当面の間、展示室ではメープルのみを展示するが、飼育室ではユルリとユメタも見られる。
キリンを担当し、地道な訓練を重ねてきた飼育展示係の片桐奈月さん(38)は「事故なく最善を尽くし、時間をかけて正解だった。来園する皆さんも落ち着いて待ってくれた」と振り返った。
新キリン館は鉄筋コンクリート造り2階建てで、延べ床面積は約607平方メートル。旧キリン舎は老朽化が進み、部屋が2室しかないなど飼育環境が課題だったが、新キリン館では展示室1室と飼育室3室を設けた。
飼育環境にこだわり、青空をイメージする照明や、キリン本来の行動を引き出すフィーダー(給餌器)、機密性の高い特注の扉などを設置。キリンは角や顔、脚などが挟まりやすいため、設備の隙間をなくし、事故防止にも注力した。
2階で同じ目線
館内はアフリカをイメージし、「生息地にお邪魔している雰囲気」(片桐さん)。観覧スペースは1階と2階に設置し、1階ではキリンを見上げるように、2階では同じ目線に立って観察できる。吹き抜けを活用した等身大パネルでもキリンの大きさを体感できる。片桐さんは「1階では大きさを体感し、2階では目線や表情などを近くで観察してほしい。キリンの魅力を一つでも見つけてもらえたら」と話している。
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