砂糖がたくさんとれるてんさい「KWS 8K860」
道総研 北見農業試験場 研究部 麦類畑作グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 豆類畑作グループ
道総研 中央農業試験場 作物開発部 作物グループ
道総研 上川農業試験場 研究部 生産技術グループ
(一社)北海道農産協会
1.背景
北海道の農家戸数の減少の中、てんさいの作付け農家戸数および作付面積も減少傾向にある。一方で、北海道全体のてんさいの総生産量は、農家一戸あたりの作付面積の拡大やてんさい品種の収量性向上により、この十年間、ほぼ一定量を維持している。しかし、今後も農家戸数の減少が進むと推測されるため、てんさい糖の生産量を維持し、収益性の確保により農家減少を食い止めるためには、さらに収量性が向上した品種が必要である。
2.育成経過
ドイツの KWS 社が育成し、平成29年に日本甜菜製糖株式会社が輸入した。平成30年から道総研(北見農試、十勝農試、中央農試、上川農試)、北海道農産協会(ホクレン、北海道糖業、日本甜菜製糖)で各種試験を実施し、令和3年に北海道の優良品種に認定された。
3.特性の概要
置換対象品種は、日本甜菜製糖の主力品種である「カーベ2K314」である。以下では、「カーベ2K314」と比較して特性を説明する。
1)収量性
標準品種「アマホマレ」との対比で収量性を説明する。全道の平均では「KWS 8K860」は「カーベ2K314」より根重が10%多く、根中糖分がほぼ並で、糖量が9%多い(表1)。十勝地域の平均でも同様の傾向であった(表2)。表3に、3か年の各試験地での「カーベ2K314」との糖量「アマホマレ」比の差を示す。全ての試験か所で「カーベ2K314」より糖量が多く、その差は3%から14%であった。表4に、現地試験3か所における糖量「アマホマレ」比の比較品種との差を示す。「カーベ2K314」を供試した美瑛町では、表1と同様に約10%糖量が多く、その他の試験地でも、令和元年の斜里町を除いて約10%糖量が多かった。以上のように、「KWS 8K860」は安定して多収性を示した。
2)病害抵抗性等
そう根病抵抗性、褐斑病抵抗性は“強”、黒根病抵抗性は“やや強”でいずれも「カーベ2K314」と同様である。根腐病抵抗性は「カーベ2K314」の“中”に対して“やや弱”で1ランク劣る。以上のように、耐病性は根腐病抵抗性を除いて「カーベ2K314」並である。抽苔耐性は、「カーベ2K314」と同様の“強”である。(表4)
4.普及態度
適地は北海道一円で、普及見込面積は15,000ha である。栽培上の注意は、根腐病抵抗性が“やや弱”であるため適切な防除に努める。
本技術内容についての問い合わせ先
道総研十勝農業試験場 豆類畑作グループ
電話(0155)62-2431
E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp