高泌乳母豚の授乳期飼料給与プログラム
道総研畜産試験場 家畜研究部 中小家畜グループ
1.試験のねらい
泌乳量が多く、ほ乳子豚の増体量が多い授乳母豚について、高い生産を維持しつつ食べ残しによる飼料廃棄の少ない授乳期間の飼料給与プログラムを明らかにする。
2.試験の方法
1)授乳期に不断給与した母豚の飼料摂取量を調査した。
2)飼料摂取量の少ない初産母豚の摂取量向上を図るための方策を検討する。
(1)授乳開始後の飼料の段階的増量方法と授乳期全期間の飼料摂取量の関係を調査した。
(2)授乳母豚用不断給餌器の使用が飼料摂取量に及ぼす影響を調査した。
3)不断給与時の飼料摂取量を基に作成した授乳母豚の飼料給与プログラムの適用状況を調査した。
3.成果の概要
1)初産母豚の飼料摂取量は経産母豚と比べて少なく、ほ乳子豚頭数が多い場合、授乳中のエネルギー不足となる個体が多くなることが想定されることから、別途、飼料摂取量を増加させる方策を検討する必要がある。また、経産母豚の食欲に応じた飼料摂取量は、泌乳や体の維持に必要なエネルギーを概ね充足することから、ほ乳子豚頭数を考慮し、自由摂取量を基準とした飼料給与プログラムを設定するのが良いと考えられた(表1)。
2)-(1)初産母豚の授乳初期の増給パターンは、従来の授乳初期からの多給法(多給2区)と比べ、多給1区は、授乳全期間の飼料摂取量が多く残飼料が少なかった(図1)。この結果と自由摂取条件での摂取量(表1)から、初産母豚への飼料給与は、授乳4日目までは1kg/日の増給、授乳期3週間の平均給与量および最大給与量は5.4kg/ 日および6.5kg/ 日に設定するのが適当であると考えられた(表3)。
2)-(2)授乳母豚に対して不断給餌器を用いることで、食べきれず餌箱に残る飼料の量を低減する可能性が推察された。しかし、初産母豚の飼料摂取量を高める効果は確認できなかった。
3)ほ乳子豚11頭以上の経産豚へは、標準区プログラム(平均6.8kg/日、最大8.0kg/日)が残飼料の少なさと大きな生産性の低下がないことから適当と考えられた(表2)。一方、食欲のある豚については、エネルギー不足による発情遅延を回避するために、自由摂取条件での授乳3週目の平均摂取量である8.5kg/日(表1)を最大給与量の上限に定めて増給する必要があると考えられた(表3)。ほ乳頭数8~10頭の母豚については、標準区プログラム(平均6.4kg/日、最大7.0kg/日)が適当であると考えられた。
4.留意点
1)本試験成果は授乳期間の一腹子豚増体重が2.4kg/日(50kg/3週間)程度となる泌乳量が多い母豚で活用できる。
2)初産母豚の給与プログラムは、ほ乳子豚数10頭以上ではエネルギーが不足するため、ほ乳子豚数が多い場合には、里子やほ乳子豚への飼料給与などにより、母豚の消耗を軽減する必要がある。
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道総研畜産試験場 家畜研究部 中小家畜グループ 小泉 徹
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