目指せ子だくさん!道産種豚のレベルアップ法
道総研畜産試験場 家畜研究部 中小家畜グループ
1.試験のねらい
系統豚ハマナスW2の繁殖能力改良のための育種価を用いた遺伝的改良手法を開発する。
2.試験の方法
1)ハマナスW2(W2)維持群において、繁殖形質の遺伝性および個体育種価について明らかにする。
2)W2の繁殖形質の個体育種価を用いた交配試算を行い、当該形質の期待改良量および近交係数や他の形質への影響を予測し、これをもとに後継豚生産のための交配方式を開発する。
3.成果の概要
1)(1)W2の集団において繁殖形質に対して近交係数は有意な効果が認められなかったことから、遺伝的パラメーターの推定式には近交係数を用いないこととした。また、F1母豚データを加えて算出した育種価は、W2のみの値と乖離していたことから、育種価算出に用いる生産データはW2のみとする
ことが適当であると考えられた。
(2)総産子数および生存産子数の遺伝率はともに0.11であり、両形質間の遺伝相関は0.84と高いため、農場において正確な記録が収集しやすい総産子数を選抜形質として改良することで、生存産子数の改良にもつながると考えられた(表1)。維持群現有雌個体の総産子数育種価は-1.487~1.974頭の範囲であり、平均値は0.29頭であった(図1)。
2)育種価上位雌個体30%選抜および50%選抜における次世代の総産子数育種価は、0.49頭および0.40頭であり、現行法を用いた場合の0.17頭と比較して、それぞれ0.32頭および0.23頭増加すると試算された。次世代の平均近交係数はいずれの選抜条件においても同等であった。選抜条件に適合する現有雌の個体数は、30%選抜で86頭、50%選抜で144頭であり、年間に必要な更新頭数120頭(雌292頭の約4割)を確保するためには育種価上位50%の雌を選抜し、産子の近交係数が12.5%未満となるような交配方式が適当であると考えられた(表2)。
4.留意点
・本成果は、平成31年度から、ハマナスW2維持群の繁殖能力改良に活用する。
・改良後のハマナスW2を用いたF1母豚を活用することにより、利用農場における一母豚当たりの肉豚出荷頭数の向上が期待できる。
<用語説明>
[系統豚]
生産能力について改良を加えられ、個体間で一定の血縁関係をもつ豚の集団。
[維持群]
系統豚の造成完了時の頭数規模および血縁関係を保つ集団。世代交代は集団内での交配により行う。ハマナスW2の維持群は民間種豚場(ホクレン滝川スワイン・ステーション)および畜産試験場の二カ所で飼養しており、系統完成時からそれぞれ独立した世代更新を行っている。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 家畜研究部 中小家畜グループ 甲田 洋子
電話(0156)64ー0611 FAX(0156)64ー6151
E-mail:kouda-youko@hro.or.jp