高齢者、畑仕事でリハビリ 北斗の老健施設で「園芸療法」
福祉村内に拡大構想
認知症に効果期待
社会医療法人北斗(鎌田一理事長)は7月から、帯広市内の介護老人保健施設かけはし(稲田町基線2)で「園芸療法」を導入した取り組みを始めた。管内初の園芸療法士剱持卓也さん(37)を採用し、利用者と一緒に野菜や花を育てるプログラムを立ち上げた。今後は農業の盛んな十勝ならではのケアとして、園芸療法を広げていく考えだ。
園芸療法は花と緑に接することで人を癒やす療法。介護やリハビリが必要なお年寄りに癒やしと体を動かす機会を提供、さらに認知症の患者が過去を思い出したり、語ったりすることで症状改善につなげる心理療法「回想法」につながる効果も期待される。農業大国・十勝にとって、園芸療法と回想法の組み合わせは高い効果をもたらす可能性もある。
園芸療法士は、日本園芸療法学会(浅野房世理事長=東京農業大学農学部教授)などが認定する民間資格で、資格保持者は全国に数百人程度とされる。かけはしで7月から働き始めた剱持さんは、更別中央中、帯広柏葉高出身。弘前大学農学生命科学部を卒業した後、兵庫県の淡路景観園芸学校で園芸療法を学び、三重県の医療機関で園芸療法士として経験を積んだ。
かけはしのプログラムは、施設のベランダに整備した畑に花や野菜の苗を植え、施設の利用者と一緒に毎週世話をするもの。23日には、剱持さんと共に、麦わら帽子をかぶって熱中症対策をした利用者15人が畑で作業を行った。
ピーマン、ししとう、ナスのそばに支柱をたて、苗と支柱をひもで結んだ。参加した大崎光雄さん(88)は「花畑の管理をしていた昔のことを思い出し、すごく楽しい」とすがすがしそうに話した。
北斗では、かけはしや十勝リハビリテーションセンター(同)などが集まるエリアを「北斗福祉村」として整備しており、剱持さんは今後、福祉村の園芸療法の中核として活動し、活動を村全体に浸透させていく。「病院や施設だけでなく、地域の方とも協力して、植物を使ったイベントやコミュニケーションを周辺に広げていければ」と目標を話している。
(奥野秀康)