検証~台風の爪痕「札内川、畑側から決壊 戸蔦別川の水流入か」
専門家「特殊なケース」
台風10号の大雨で発生した、帯広市中島町の札内川堤防の決壊は、札内川の水があふれたのではなく、堤防外側(堤防に囲まれた畑側)に貯まった水の力で引き起こされたことが、専門家らの調査で分かった。合流する戸蔦別川の決壊で流れ込んだ水が原因だと考えられ、現地を見た専門家は「特殊なケース」としている。
台風10号の大雨で両河川の上流部は総雨量が500ミリに達した。札内川では8月31日早朝、大正橋下流の左岸が約200メートルにわたり決壊が確認された=図の地点(3)。戸蔦別川も合流地点の1キロ余り上流の右岸が約300メートル決壊、流れが変わっていた=同(1)。合流地点の外側にある民家が床上浸水し、約30ヘクタールの畑は農作物や耕土が流失=同(2)。帯広市内の大きな被災地の1つで、管内を訪れた閣僚らも相次いで視察した。
堤防の決壊は川の増水で発生するのが一般的だが、札内川を管理する帯広開発建設部は、堤防の切れ方や流木の位置などから「外側(畑側)から決壊したことは、はっきりしている」とする。高さが地面から4、5メートルある堤防が、畑の方からの越水や水圧で崩された。
近くの農家は、一時は札内川の堤防がダムのように水をせき止めて畑側の水位が上がったとし、「もし決壊していなかったら、もっと浸水して被害が出た」と証言。「戸蔦別川の決壊で流れ込んだ水が畑を流した」と語っている。
一方、戸蔦別川を管理する道は、堤防外側にも相当な雨が降っていたことから、「(札内川の決壊は)雨水によるものか戸蔦別川の決壊によるものか、はっきりしたことは分からない。どちらの川が先に決壊したか、夜で見ている人がいなかった」としている。
札内川の礫(れき)河原再生事業などに関わり現地に詳しい北海道大学大学院の泉典洋教授(河川・流域工学)は、災害直後の9月1日に現地を視察。「支流(戸蔦別川)の堤防が切れて堤防に囲まれた畑の中に入った水が、もう1回(本流の)堤防を越えた特殊なケース」と指摘する。
どちらの川の水位が先に上がったかで起きる現象は変わる、としつつ「最初に戸蔦別川が決壊して、(三角地帯に)池のように水がたまったのでは。川がぶつかる合流地点は治水の重要地点で非常に難しい」と話している。(安田義教、小林祐己)