褐斑病に強い!てん菜「KWS2K314」
北見農試 研究部 地域技術グループ、十勝農試 研究部 地域技術グループ
中央農試 作物開発部 作物グループ、上川農試 研究部 地域技術グループ
北農研センター 畑作基盤研究領域、北海道てん菜協会
1.背 景
平成19年に優良品種に認定された「かちまる」は、多収であるため、主力品種の一つとして広く作付けされてきた。しかし、重要病害である褐斑病抵抗性が弱く、そう根病に抵抗性を持ない等、耐病性に弱点があり、これらの病害に強い品種の導入が望まれてきた。
これらの背景から試験を行ってきた「KWS2K314」は、そう根病抵抗性を持ち褐斑病抵抗性も“強”まで向上している。また収量面においても、多収品種である「かちまる」より根重がやや重い。さらに根腐病抵抗性が「かちまる」よりやや優る“中”であり、製糖品質面でも「かちまる」よりやや優る。以上のことから、「KWS2K314」を「かちまる」に置き換えて普及させることで、てんさい生産と農家所得の安定に寄与できる。
2.育成経過
ドイツのKWS 種子会社が育成し、平成24年に日本甜菜製糖株式会社が輸入した。平成25年から道総研農試(北見農試、十勝農試、中央農試、上川農試)、北農研センター、北海道てん菜協会(ホクレン、北海道糖業、日本甜菜製糖)で各種試験を実施し、平成28年に北海道の優良品種に認定された。
3.特性の概要
1)収量性
収量全道平均では、基準品種「アマホマレ」対比で、対照品種「かちまる」と比較して、根重は4ポイント重く、根中糖分は並で、糖量が2ポイント多い(表1)。このように根重が「かちまる」よりやや重い傾向にある。
十勝地域の収量平均では、基準品種「アマホマレ」対比で、対照品種「かちまる」と比較して、根重は3ポイント重く、根中糖分は並で、糖量は4ポイント多い(表2)。このように根重がやや重く糖量もやや多い傾向にある。
2)病害抵抗性等
褐斑病抵抗性は、「かちまる」が“弱”に対して“強”、そう根病抵抗性は、「かちまる」が無に対して“強”、根腐病抵抗性は、「かちまる」が“やや弱”に対して“中”、黒根病は、「かちまる」と同様の“やや強”である。全体的に「かちまる」より病害抵抗性は大きく優る。抽苔耐性は「かちまる」と同様の“強”である(表3)。
褐斑病慣行防除圃場で調査した褐斑病発病程度(表4)は、ほとんどの調査場所で「かちまる」より低く、「かちまる」の罹病がかなり進んだ調査場所でも低く抑えられた。このように、一般的な防除条件下において、「KWS2K314」の抵抗性の効果が明瞭に観察された。
3)製糖品質
全道平均で不純物価が「かちまる」と比較して15ポイント低く、製糖品質がやや優れる(表5)。
4.普及態度
適地は北海道一円で、普及見込面積は10,000ha である。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro. or. jp