大豆畑の雑草を予測して除草しよう
十勝農試 研究部 生産システムグループ
１．背景と目的
大豆栽培における種草取りを含む手取り除草作業を現行の35h/ha から10h/ha に短縮することで大豆栽培の総作業時間52h/ha の半減が可能である。そのため、除草剤や機械除草等の技術をより効率化する必要がある。手取り除草時間の実態から雑草管理の目標値を明らかにするとともに、この目標値を活用した合理的な除草体系を提示する。
２．試験方法
現地農家ほ場の雑草発生状況と雑草防除方法の実態について明らかにし、これらのデータから発芽法による雑草草種およびほ場雑草密度の推定方法を示し、発芽法で想定された草種に基づいた土壌処理・茎葉処理剤による防除効果を明らかにする。７月中旬の雑草密度と抜き草所要時間、大豆茎葉の繁茂状況の関係を明らかにし、抜き草所要時間を削減するための防除効率の目標値を検討し、防除体系フローを示す。
発芽法：「埋土種子調査マニュアル（第２版）」（農研機構、2013）に基づき、耕起後の土壌を採取し、40℃で乾燥後、保水性シートを敷いたバッドに厚さ１cm 以下になるよう広げ、ハウス内で適宜温度調整、潅水を行って、１か月後の出芽数を計測し、１Ｌ当たりの本数に換算する。
３．成果の概要
１ ）現地調査ほ場では広葉雑草が優先しイネ科は発生無しか、発生しているほ場でも１本/㎡未満がほとんどであった。除草剤の散布回数は大豆作で１～３回、中耕除草は２～６回、手取り除草は３～26ｈ/ha であった。調査した30ほ場中20ほ場が発芽法で20本/Ｌ以下であった。
２ ）発芽法調査時期による発生草量の差は小さい。発芽法による雑草草種の予測確率は79％で、高い確率での草種の推定が可能である。また、発芽法による雑草発生本数と無除草区雑草密度は相関関係が認められ、発芽法から無除草区の雑草密度の推定が可能である（図１）。その時の取得サンプル数は10サンプル以上で精度が高くなる。
３ ）広葉雑草優先のほ場において、土壌処理剤散布時の土壌が適湿であれば、土壌処理に広葉対象土壌処理剤もしくは広葉・イネ科対象土壌処理剤と中耕処理の組み合わせで98％の防除効率が期待できる。土壌が乾燥した状況では土壌処理剤の効果が低下するので茎葉処理剤を加えた体系処理と中耕処理の組合せで防除効率を高めることができる（図２）。
４ ）「大豆除草の管理目標値（2012指導参考事項）」に準じて、７月中旬の抜き草所要時間10ｈ/ha 以下を目標とした。大豆の生育状況が異なるやや過繁茂の状況において行った本試験では、７月中旬の雑草密度と抜き草所要時間のＹ切片を０とした回帰直線から、雑草密度は前述の管理目標値である３本/㎡より少ない２本/㎡以下にする必要がある（図３）。その時の除草体系および管理目標は以下の通りである。発芽法による雑草発生量10本/Ｌでは防除効率97％、16本/Ｌで98％が目標となる。発芽法で16本/Ｌ以下のほ場では土壌処理剤に広葉対象、または広葉・イネ科２成分の土壌処理剤を選択し、中耕処理は必ず行う（図４）。土壌が過乾燥で土壌処理剤効果の低下が予想された時、茎葉処理剤の散布を加える。また、発芽法で17本/Ｌ以上の発生量の時、防除効率99％を目標とし、土壌処理剤、中耕処理に加え必ず茎葉処理剤を散布する。
４．成果の活用面と留意点
発芽法は新規に導入・管理するほ場で雑草発生状況が予測できない時に活用できる。また、発芽法サンプルは大豆播種前に日中20℃以上（ハウス内で２重トンネル内等）を確保できる場所に設置する。防除体系に係る試験は十勝地方の火山性土、広葉雑草優占ほ場で実施したデータである。
※防除効率：無除草区雑草本数に対する除草された雑草本数の割合(%)
「埋土種子調査マニュアル（第２版）」：下記ウェブサイトから入手可能
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/narc_maidoshushi_man.pdf
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 生産システムグループ
電話（0155）62－2431 E-mail：tokachi-agri＠hro.or.jp
