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藤村 長距離2冠 スピードスケート代表選考会

【女子5000メートル】3000メートルとの2冠を達成して喜ぶ藤村祥子

 【長野】スピードスケートのソチ五輪日本代表選手選考会(日本スケート連盟主催)最終日は29日、エムウエーブで行われた。午後の女子5000メートルは安定したラップタイムを刻んだ藤村祥子(宝来中央歯科)が7分8秒63で優勝、3000メートルとの2冠を達成し、初代表を飾った。3位には石野枝里子(日本電産サンキョー-白樺学園高出)が7分16秒33で食い込んだが、五輪出場には届かなかった。男子1000メートルは1、2位の選手が五輪へ。十勝勢は大和田真(北翔大-本別高出)の3位が最高。日本記録保持者の長島圭一郎(日本電産サンキョー-日大、池田高出)は4位に終わり、この種目の3大会連続代表を逃した。日本の五輪出場枠がない同1万メートルは、国内最高記録を持つ小川拓朗(白樺学園高)が13分37秒26で制した。2位は阿部大輝(クレアシオン-日大、白樺学園高出)、3位は森哲平(北斗病院)と十勝関係選手が表彰台を独占した。(岡部彰広、塩原真)

大舞台で「最高の滑り」を
藤村、女子5000も制す

 「2冠の感想ですか。ウフフ。うれしいです」。藤村祥子は前日の3000メートルに続く優勝を決め、あふれ出る喜びを隠さなかった。周囲には二重、三重の報道陣。「囲まれて、ようやく優勝の実感が出てきました」と言葉を弾ませた。

 155センチの小さな体がまたもや躍動した。長距離第一人者で同走の石野枝里子に先行を許すが、3000メートルと同様、マイペースを守った。1周33秒台後半から34秒台前半を守り抜くと、3000メートルすぎに逆転。そのまま差を広げた。

 「今回はしっかり準備をしてきましたからね」。元全日本選手権覇者の小竹直喜監督が言い切った。「穂積選手らは強い。でも、タイトな(日程の国際大会の)中で練習ができていなかったのでは。藤村はW杯に行きたかったが、留守番部隊。でも、結果として立て直しができた」

 早くに長野入りして調整する選手がほとんどの中、大会直前まで地元の明治オーバルで滑り込めたのも大きかった。「(屋内)リンクがないなら、行かなくてはなりませんでしたけどね。スタートの200メートルから1、2周のうちに自分のペースをつくる練習ができた」(小竹監督)。高校生らの道大会出場で空いたリンクで、今回の安定したラップタイムを刻む土台を黙々とつくり上げた。

 2種目のうち5000メートルを主に鍛えてきた。「世界を狙える種目だから。五輪まで、もう少しランクアップさせたい」と戦略家の小竹監督が目を輝かせる。藤村も、今季のラッキーカラーという水色のネイルをきらきらさせながら、今や口癖のようになった「最高の滑り」を大舞台で見せるつもりだ。

五輪代表に選ばれ、岡崎朋美に激励される高木菜那(右)

涙から笑顔に
高木菜

 ○…高木菜那が涙から一転、笑顔になった。五輪初出場の切符を懸けた最終日の5000メートルで出場枠外の5位に終わったが、1500メートルと団体追い抜きで代表に選ばれた。

 この日午前の1000メートルを回避しての5000メートルだった。今季のワールドカップ(W杯第3戦アスタナ大会=カザフスタン)で4位の石澤志穂に次ぐ5位に入るなど、代表選考に有利と考えたからだ。

 「力不足だったと思う。3本(レース)とも悔いが残ります」と一時は流した涙を大切にしながら、「負けないという気持ちに切り替えて頑張りたい」と話していた。

気合が気負いに 長島
 ○…出場枠が2つの男子1000メートルで、3大会連続の代表を目指した長島圭一郎は4位に終わった。前日に「駄目だったら、この種目から引退するつもりで滑る」と話していたが、それが気負いにつながった。

 最初の200メートルのラップタイムは16秒07。2007年に高速リンクのカルガリー(カナダ)で、日本記録を樹立したときの16秒26を上回るスピードだった。その影響で、直後のカーブで左手をつくなどバランスを崩した。「気合が入りすぎた。200メートルで力を出し切ってしまった」という失敗レース。最終周回は17番目のラップタイムと失速し、「31歳にもなってペース配分ができなかった」と頭をかいた。

 日本記録を保持するなど思い入れのある得意種目の出場を逃したが、逆に500メートルの金メダル奪取に集中できる環境が整った。来年1月の世界スプリント選手権で滑る1000メートルも「500メートルにつなげるためのもの」と位置付ける。

【女子5000メートル】表彰台で笑顔を見せる藤村祥子(中央)と石野枝里子(左)

3位も届かず
石野

 ○…2大会ぶりの五輪を目指した石野枝里子だが、5000メートルで3位。同種目の出場枠内に滑り込んだものの、五輪代表には届かなかった。

 ラップタイムは「入ったペースで考えよう」と、勢いを大切にしてレースを展開した。1周33秒台を保ち、2000メートルすぎまでは快調だった。しかし、その後はペースを落とし続け、本人が持つ国内最高記録から10秒ほど遅れてゴールした。「後半まで持たないのが今の自分。それが改善できていれば、行けたのでしょうけど」と、さばさばとした表情。

 レース後は「コーチには(代表発表を)待っていますと言いはしましたけど…。自分らしい攻めの滑りはできました」。不振にもがきながらも、向上心を忘れず取り組んできた証しをしっかり見せつけた。

まさかの落選
神谷

 ○…短距離2種目で結果を残した神谷衣理那は、初の代表が確実視されていた。1000メートルの後には「感動を与える滑りをしたい」と希望に満ちた表情だったが、閉会式での五輪代表発表では名前を呼ばれなかった。

 神谷とともに練習する先輩の辻麻希(開西病院)は「外れたんですか、何でですかと言われて、顔を見れなかった。肩を支えてやることしかできず、一緒に泣きました」と話す。神谷はうずくまったまま動けず、チームの仲間らに抱えられて会場を後にした。

 指導する川原正行コーチ(開西病院監督)は「十分な力はあったが…。若いので次を目指して頑張ってほしい。選ばれた人も頑張ってほしい」と悲痛な表情で言葉を振り絞った。

アジア予選に全力
阿部大輝の話

 五輪を目指していたが、残念な結果に終わった。でも、世界選手権アジア予選会に選ばれたのだから全力で戦いたい。

全然駄目
羽賀亮平(日本電産サンキョー-日大、白樺学園高出)の話

 今回は全然駄目だった。選ばれなかったのは仕方ない。とりあえず体を休めたい。

平昌につなげたい
高木美帆の話

 覚悟はしていた。結果をしっかりと受け止め、平昌五輪(韓国)につなげられるよう頑張りたい。

(7位以下関係分)
【男子】
 ▽1000メートル
世界記録 シャニー・デービス(米国)1分6秒42
日本記録 長島圭一郎(日本電産サンキョー)1分8秒09
国内最高記録 長島圭一郎(日本電産サンキョー)1分9秒74
リンク記録 シャニー・デービス(米国)1分8秒92
(1)山中 大地(電算)1分10秒94
(2)近藤 太郎(専大)1・11・05
(3)大和田 真(北翔大-本別高出)1・11・08
(4)長島圭一郎(日本電産サンキョー-日大、池田高出)1・11・24
(5)大和田 司(味のちぬや-北翔大、白樺学園高出)1・11・60
(6)小田 卓朗(早大)1・11・62
(7)沼崎高行(道東電機)1・11・70
(9)太田明生(JR北海道-明大、池田高出)1・11・99
(12)小林友剛(水戸開研-明大、白樺学園高出)1・12・14
(15)長谷川翼(日大-白樺学園高出)1・12・28
(16)後藤卓也(日大-帯農高出)1・12・29
(18)羽賀亮平(日本電産サンキョー-日大、白樺学園高出)1・12・83
(19)磯賢汰(日大-帯農高出)1・13・21
(20)池田崇将(専大-白樺学園高出)1・13・41
(21)居城和樹(信州大-帯南商高出)1・13・44
※今野陽太(開西病院)は転倒
 
 ▽1万メートル(カルテット)
世界記録 スベン・クラマー(オランダ)12分41秒69
日本記録 平子 裕基(開西病院)13分19秒64
国内最高記録 小川 拓朗(白樺学園高)13分31秒34
リンク記録 スベン・クラマー(オランダ)12分57秒71
(1)小川 拓朗(白樺学園高)13分37秒26
(2)阿部 大輝(クレアシオン-日大、白樺学園高出)13・44・89
(3)森  哲平(北斗病院)13・47・23
(4)若林 大季(日光SC)13・57・99
(5)一戸誠太郎(山形中央高)14・0・43
(6)土屋 良輔(専大)14・2・21

【女子】
 ▽5000メートル(カルテット)
世界記録 マルティナ・サブリコバ(チェコ)6分42秒66
日本記録 石野枝里子(日本電産サンキョー)6分55秒07
国内最高記録 穂積 雅子(ダイチ)7分5秒17
リンク記録 マルティナ・サブリコバ(チェコ)6分58秒22
(1)藤村 祥子(宝来中央歯科)7分8秒63
(2)穂積 雅子(ダイチ)7・9・84
(3)石野枝里子(日本電産サンキョー-白樺学園高出)7・16・33
(4)松岡 芙蓉(富士急)7・17・84
(5)高木 菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)7・19・70
(6)阿部 真衣(日体大)7・23・86



選考難航4時間 女子団体追い抜きが軸に
 強化委員会による五輪代表17人の選考は、4時間近くに及んだ。

 選考基準を突破した選手が多い女子が難航した。ワールドカップ(W杯)第1戦2位、第2戦4位となった団体追い抜きがメダルに近い種目として選考の軸となり、メンバーだった高木菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)ら3人に今回1500メートル3位の押切美沙紀(富士急-駒大苫小牧高、中札内中出)を選出した。

 この団体追い抜きと短~長距離の18枠を国別上限の10人で選ぶために、2種目とも出場4枠を確保していた女子短距離が削られる形となり、500メートル3位、1000メートル4位の神谷衣理那(毎日元気-白樺学園高出)が僅差で選ばれなかった。

 出場枠が少なかった男子は「削るのではなく当てはめた」(強化委)という形に。上限8人ながら複数種目に出る選手がいたため、代表選手は7人となった。

 前回バンクーバー五輪での日本のメダル数は銀2、銅1。石幡忠雄スピード強化部長は「当然、上回る成績が目標。金を含む4個以上」を目標に掲げた。

 このほか、五輪代表選手に選ばれた管外選手は次の通り(名前、所属、出場種目の順)

【男子】
▽加藤条治(日本電産サンキョー)500メートル
▽上條有司(同)同
▽山中大地(電算)1000メートル
▽近藤太郎(専大)1000メートル、1500メートル
▽ウィリアムソン師円(山形中央高)5000メートル

【女子】
▽小平奈緒(相澤病院)500メートル、1000メートル
▽住吉都(ローソン)同、同
▽田畑真紀(ダイチ)1500メートル、団体追い抜き
▽菊池彩花(富士急)同、同
▽穂積雅子(ダイチ)3000メートル、5000メートル



世界スプリント選手権の出場選手に選ばれた沼崎高行

沼崎ら世界スプリントへ
 日本スケート連盟は29日、スピードスケートの世界スプリント選手権(来年1月18、19日・長野)と世界選手権アジア地区予選(同1月11、12日・苫小牧)に出場する代表選手を発表した。

 世界スプリントは男子が長島圭一郎、沼崎高行(道東電機)、上條有司(日本電産サンキョー)、女子は小平奈緒(相澤病院)、辻麻希(開西病院)、神谷衣理那で臨む。

 世界選手権(来年3月、オランダ・ヘーレンフェイン)の国・地域出場枠が懸かるアジア地区予選の代表は女子が高木美帆(日体大-帯南商高出)、石野枝里子、穂積雅子(ダイチ)、藤村祥子、男子はウィリアムソン師円(山形中央高)、阿部大輝、中村奨太(ロジネットジャパン)が選ばれた。

 同予選と併催のアジア距離別選手権には、同予選の7人のほか、長谷川翼(日大-白樺学園高出)、大和田真、神谷衣理那、永田希絵(高崎健大-帯南商高出)が出場する。

初の国際大会へ
沼崎

 ○…26歳の沼崎高行が世界スプリント選手権の代表に選ばれ、国際大会初デビューが決まった。

 根室管内別海町出身。白樺学園高から明大へ。中学時代からスピードスケートの国内トップクラスで活躍してきた佐藤睦浩社長の道東電機(帯広)の支援を受けて活動している。大和ハウス工業の大菅小百合コーチ(白樺学園高出身)の下、及川佑、太田明生のトップスプリンターのチームに合流させてもらい、練習に励んできた。

 今大会は500メートル1回目で4位と健闘。まだ2本そろえられないのが課題だが、及川は沼崎のレースへの取り組みを高く評価する。「フォームは粗削りだが、最後までがむしゃらに体が動くのはすごい。彼から気持ちがすごく伝わってくる」と自らの励みにもしている。

 沼崎は「今回は500メートルでベスト記録も出たし、悪くはなかった。選ばれたからには、取り組んできたことを出したい。五輪のつもりで頑張りたい」と意気込んだ。

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