帯広出身村雲さんが群像新人文学賞
帯広市出身の会社員村雲菜月さん(28)が、連作小説集「もぬけの考察」で、第66回群像新人文学賞を受賞した。村雲さんは「親しい友人たちや家族へ向けて書いてきた物語が、その枠を越えてまだ知らないあなたにまで届くこと、とても光栄に思います」とコメントしている。(細谷敦生)
村雲さんは帯広柏葉高、金沢美術工芸大学デザイン科卒。現在は横浜市在住で民間企業に勤めながら小説を執筆している。本名は非公表。2021年には「転がるバレル」で第38回さきがけ文学賞を受賞した。
群像新人文学賞は講談社が主催する、純文学の公募新人文学賞。過去に村上龍さんや村上春樹さんらも受賞している。今回は1986編の応募があり、5人の選考委員によって2作品が当選作となった。もう一つの当選作は夢野寧子さんの「ジューンドロップ」。
「もぬけの考察」は、あるマンションの一室を舞台に、次々と入れ替わる住人たちの日常のゆがみと恐怖を描いた4編で構成する連作小説集。5月に受賞が発表され、7月に講談社より単行本が出版された。
村雲さんはコロナ禍だった20年の夏ごろから小説を書き始めた。外へ遊びに行くことができず暇になったため、パソコンで絵を描こうとしたがペンタブレットが接続できず、代わりにパソコンで小説を書き始めたのがきっかけという。「信じられないほどの密度で小説と向き合った3年間」と振り返り、「書き続けていなければ決して出会えなかった人たちに、たくさんの言葉を教えていただいた。未熟な私の書いた小説が受賞するまでに至ったのは、その人たちの言葉に支えられているから」と話している。