心強い音とその理由~人の気配
今月8日、新得町で開催された「GANKE FES 2023」でもその手腕を発揮していた東京の仲間を紹介したい。
ライブPAの柳田亮二さんは、ミュージシャンが出す音や声を整え、良い音でスピーカーから出す仕事をしている。僕のライブもそう。PAとは、パブリック(大衆)アドレス(伝える)の略である。
さらに、レコーディングエンジニアの顔も持つ彼とは、約70曲の楽曲を一緒に作ってきた。こちらは、主にスタジオで演奏をされる音を録音し、編集する仕事だ。1stアルバムの1曲目『Todays Another Day』の1音目から、彼に録(と)ってもらった音である。
同じ仕事に感じる人もいるかもしれないが、実はこの二つは別の職業である。どちらもできるという人は決して多くない。専門職なので、それぞれの世界で一人前となるのは、簡単なことではない。ある意味、二足のわらじとも言える。
僕が彼と音を出したい理由は、まさにその点にある。レコーディングとは、一生残る作品なので、こだわるところも多く、納得がいかなければやり直すこともできる。それを一発勝負のライブで演(や)るのである。一緒に作った人が音を出してくれれば、そんなに心強いことはない。曲のビジョンの会話はもうすでにしているので、その続きの、ライブに必要なところに集中することができる。
とはいえ、もちろん他の人ではライブができないというわけではない。柳田さんの体はひとつ。スケジュールが合わないことも多々ある。その際は別の人に担当してもらうことになるが、ちゃんと会話をして、その日のベストの音を出してもらう。そのくらいプロ意識が必要な世界。柳田さんをはじめ、話していて面白い人がPAに多いのもそのためである。
裏方に注目して音楽を聴くと、また別の楽しさがあるかもしれない。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。帯広柏葉高卒。Riddim Saunterを解散後、ソロ名義での活動を続ける。V6への楽曲提供が話題になるなか、ニューアルバム『Chase Af-ter』をリリース。