人の気配「最高に粋なオヤジさん」
三重県の四日市にオヤジさんと呼んでいる仲間がいる。その名の通り、見た目はオヤジである。僕より年は上だが、年上からもオヤジと呼ばれている。どこの街にもそういう人が1人や2人はいるものだ。
ただ、四日市のオヤジさんはなかなか出会うことのできない粋な男だということを先に記しておく。付き合いは10年以上で、かなり親しい仲だと僕は思っている。僕が伊勢神宮に初詣に行く際は合流したり、今月も彼の新居に招かれたりしていることからも、僕の独りよがりではないはずである。
四日市付近の高速道路を走行するときは、御在所SAで休憩するようにしているのだが、そこを通るといううわさを聞きつけたオヤジさんが、四日市名物のトンテキを片手に登場したりもする。それでいて決してこちらの懐に入りすぎず、こちらが気を使わないようにも考えてくれている。とても良い距離感を保ってくれているのだ。それは簡単なようで、実は難しい。
彼自身がDJをする音楽人である。少なからずそのことも関係しているかもしれないが、それ以上に人として相手の気持ちを優先しているのを感じる。年上や強い立場の相手にそれをすることは息苦しいが、年下や弱い立場の相手にそれができるのは優しさだ。大げさに聞こえるかもしれないが、今の時代に必要な感覚である。
先日、既に廃盤となっている『Just A Side Of Love』の7inchが倉庫から見つかった。ウェブショップに出したところ、「買い逃してたんだ」とオヤジさんから連絡が入った。持っていてほしいと思う人のところに自分の作品が届くことは、何にも替え難い喜びである。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。昨年のV6への楽曲提供が話題。12月7日にはニューアルバム『Chase After』がリリースされる。