子どものコロナワクチン接種 十勝でもさまざまな声
5~11歳の子ども対象の新型コロナウイルスワクチン接種について、政府は公費での接種を認めた上で、3月以降に接種を始める方針だ。12歳以上と同様に「努力義務」を課すかについては、厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会でも意見が分かれ、結論を持ち越した。十勝管内でも、「早く打たせたい」「様子を見たい」などと二分する。
厚労省は、分科会で(1)子どもの感染者数は増加傾向(2)重症化する場合もあり、医療提供体制にも一定の影響を与えている-とし、「子どもへの接種が進むと、社会全体の感染者数や重症者数を減らせる効果も期待される」と説明する。
5歳と2歳の子を持つ帯広市内の主婦(39)は、「(5歳の子の)ワクチン接種を受けるつもり」と話す。子どもたちの父は医療従事者。「副反応の心配もあるけど、感染するよりはいい。早く受けさせたい」
一方、分科会の中では一部の専門家から、副反応リスクなどから「積極的に接種を勧めることには慎重であるべきだ」などとする意見も寄せられた。
7歳、5歳、1歳の子どもを育てる市内の主婦(32)は「保育園や学校でクラスター(感染者集団)が発生しているのは分かっている」としながらも、「万一、自分の子どもに重たい副作用が出たら…。様子見したい」とする。
当の子どもたちは「コロナにかかって、大好きなスポーツ教室に通えなくなるなら、腕が痛いのは我慢する」(音更町内の小学5年女子)、「友だちが打つなら打つ」(妹の小学3年女子)と、いたって前向き。ただ、父親(43)は「子どもの意思を尊重したいが、メリットとデメリットを、どこまで比較衡量できているのか…」と打ち明ける。
子どもたちを預かる教育現場。市内の小学校の校長は「12歳の接種では、子どもたち同士が特に話題にすることもなく、トラブルも無かった」とするが、今後は低・中学年が対象となるだけに、「(接種の有無で)いじめにつながらないか心配だ」と懸念する。(松岡秀宜、澤村真理子、丹羽恭太)
札幌医科大学の横田伸一教授(微生物学)に、5~11歳の子どもがワクチンを打つメリットとデメリット、意見が分かれている保護者へのメッセージなどについて聞いた。
-子どもがワクチンを接種するメリットとデメリットは。
ウイルスの変異が進むにつれて、子どもへの感染が目立つようになってきたことから、以前に比べて感染拡大を防ぐというメリットは、ますます大きくなっている。また、まれに起きるかもしれない重症化の予防も期待できる。
一方で、ごくまれな有害事象は出てくる可能性はある。まれなものは、多くの人に接種しなければ分からない。大人にはなかった有害事象が出てくる可能性も完全に否定できないのがデメリット。
-保護者の中でも「早く打たせたい」「副反応が怖い」と意見が分かれているが。
海外のワクチンの治験結果を見ると、接種による効果や一般的な副反応は、12歳以上と同等であると考えられる。大多数のお子さんやその周囲の人にとっては、ワクチンの恩恵が受けられるだろう。
意見が二分するのは当然と思う。どちらの意見も尊重されるべき。打たせたいと思う方は、機会が来たら接種する。ちゅうちょされる方は、厚労省などが発信している確実な情報を吟味した上で、打たせないという判断があってもいいと思う。肝心なのは接種の有無による区別や差別などの分断を生まないことだ。
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十勝毎日新聞は子どもの新型コロナウイルスワクチン接種について、インターネット上でアンケートを行っている。回答は専用フォームから。
<予防接種の努力義務>
予防接種法の「対象者は接種を受けるよう努めなければならない」とされる規定。日本脳炎や風疹など、定期接種のワクチンの多くに適用されている。かつては「義務」と規定され、罰則も適用されたが、「個人の意思を尊重すべき」との考えを受け、1994年に努力義務に改定された。