太陽光発電所敷地から畑に雨水流入 ビート苗流される被害 音更
【音更】音更町十勝川温泉の傾斜地にある太陽光発電所の敷地から、土砂混じりの雨水が隣接する畑に流れ込み、農業被害が出ていることが18日までに分かった。環境に優しい太陽光発電が思わぬ形で環境に負荷を与え、地域住民らを苦しめている。
同発電所は十勝川温泉6にある。約3・5ヘクタールで、複数の地権者がいた山林を太陽光発電建設などを手掛ける本社埼玉県の企業が取得し、数十基の太陽光パネルを設置。その後、埼玉の企業は土地を所有したまま、太陽光発電設備を山梨県の企業に売却した。
経済産業省の「固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギー発電事業の認定発電設備」として、昨年8月に運転を開始。約1300キロワットの発電出力で、山梨の企業が売電し収益を上げている。埼玉の企業は運転開始に合わせ、発電所の敷地と畑の境界に貯水池などを整備し、地面は防草シートで覆った。
同発電所の敷地は傾斜し、下側には隣接して約3ヘクタールの畑(十勝川温泉北16)がある。40代と70代の農業男性がそれぞれ別の地主から約1ヘクタール、約2ヘクタールを借り、ビートを栽培している。
このうち被害に遭ったのは40代農業男性の畑。男性によると、今年4月29日夜から30日夕方にかけて降った大雨で、同発電所の敷地から土砂混じりの雨水が畑に流れ込み、ビート苗が流され、後日、移植し直した。さらに今月10日、帯広地方に大雨(同88・5ミリ)が降った際には音更消防署の署員十数人が出動し、同発電所敷地と畑の境界線などに160個の土のうを設置、畑への雨水流入を抑える緊急処置を施した。
40代農業男性は「雨が降るたびにこれでは…。何の手も打ってくれない企業には、怒りを通り越してあきれている」と話す。町は埼玉の企業に対策を求めたが、「法的な根拠がないので対応に苦慮している」(経済部)とする。
直接の被害はないが、70代農業男性の畑には、春先に強風ではがれた防草シートから、シートを留めていた複数のU字ピン(長さ約20センチ)が飛散したこともあったという。
埼玉の企業は11日、十勝毎日新聞の取材に「心苦しいが、対応するのは盆明けになる」(東京支社)と回答。16日には同社の社長らが現地を訪れ、農業者らから被害状況を聞いた。社長は取材に「雨水が畑に流れ込む状況は確認した。できる限り迅速に対応する」と話した。
道議会では6月の定例会一般質問で小泉真志氏(民主・道民連合、十勝区)が、太陽光発電施設が及ぼす周辺環境への影響について4月末の同事案を引き合いに出して指摘している。小泉氏は「こうしたケースは全道的にまだまだあるとみている。国、道に改めて法整備を含め、しっかりとした対処を求めたい」としている。(奥野秀康、内形勝也)