北斗と自治体病院が連携し、脳や心臓の画像診断
北斗病院(帯広市、井出渉院長)と十勝管内町村部の医療機関が、コンピューター断層撮影(CT)などの医療画像を通信ネットワークで共有し、早期診断・治療に生かすシステムを運用している。本別町国保病院が今月に環境整備し、これで4町の自治体病院が導入した。脳や心臓の疾患を持つ遠隔地の患者の画像を、北斗病院の専門医がリアルタイムで診断し、救急搬送の判断などに役立てている。
連携システムは、インターネット上でデータ保存や利用ができるクラウドサービスを活用している。町村の医療機関が撮影した患者のCTや磁気共鳴画像装置(MRI)の画像を送信し、北斗病院側で脳や心臓の専門医が画像を確認、診断する。従来のシステムより操作性が向上し、コストやセキュリティー面も優れているという。
北斗病院では「緊急画像連携システム」として、2019年に浦幌町立診療所、広尾町国保病院と体制を構築。今年5月に足寄町国保病院、今月からは本別町国保病院も導入した。
町村部の医療機関が、診断の難しい急変患者について基幹病院の医師と相談する際、電話だけでは伝えにくい病状説明も、連携システムだと同じ画像を見ながら診断できる。
大幅な時間短縮
また、救急搬送が必要な場合は到着前に患者情報を把握できるため、病状にあった処置を指示したり、受け入れ準備を整えたりと準備が可能。MRI室や手術室の確保、スタッフ手配などがスムーズに進めば、病院に到着して15分程度で治療を開始できるなど大幅な時間短縮につながる。
北斗病院では脳神経外科や心臓血管外科の医師らが画像診断に対応する。同病院の西尾明正副院長は「脳内血管の動脈閉そくなどは、治療開始が早ければ早いほど予後が良い。事前のCT情報だけでも状況が推定でき、準備できるのでメリットは大きい」と話す。
専門的な診断で経過観察になれば、不要な救急搬送を避けられ、患者や家族への負担軽減につながる。同病院心臓血管外科の井上信幸主任部長は「使いやすいシステムなので、(基幹病院へ患者を)送るべきかの判断や診療のコンサルとして気軽に相談してもらいたい」と言う。
広い十勝で有効
足寄町国保病院とは5月以降、数件の画像診断が行われ、村上英之院長は「脳疾患などの治療は時間が勝負。画像を一緒に見て、適切な処置をリアルタイムにできるのは心強い」と効果を実感する。西尾副院長は「画像連携は広大な十勝で有効に地域医療を展開するためのシステム」と話している。(安田義教)