心肺停止の男性は船長 大樹漁船転覆事故
【根室】大樹漁協所属のサンマ棒受け網漁船「第六十五慶栄丸」(29トン)が納沙布岬(根室市)の東方沖約610キロ付近で転覆し、乗組員の男性8人が行方不明になった事故で、第1管区海上保安本部(小樽)などは20日午前、現場海域で捜索を再開した。事故から3日が経過したが、心肺停止状態で18日に発見された1人を除き、残る7人は20日正午現在も見つかっていない。発見された乗組員を乗せた巡視船「いしかり」は同日午後、根室市の花咲港に到着した。心肺停止状態の乗組員は家族により船長の敬禮寿広さん(52)=根室市=と確認された。
1管本部は19日に潜水士8人で船内を調べたが、乗組員は見つからず、船内捜索を打ち切った。20日からは巡視船と航空機による捜索を続けている。
釧路海保の巡視船「いしかり」は、発見された乗組員を乗せて19日午後2時すぎに現場の海域を離れ、20日午後0時20分ごろに花咲港に到着した。
転覆した慶栄丸も、巡視船「えりも」がえい航し、同港に運ばれるが、時期のめどは立っていない。
慶栄丸には道内の8人が乗船。十勝からは船主で大樹町旭浜の花川慶一さん(58)、音更町駒場本通の佐々木大介さん(43)の2人が乗っていた。
◆申し訳ない 神山組合長
慶栄丸が所属する大樹漁協の神山久典組合長と伊藤浩二専務理事は20日朝に花咲港に入り、巡視船「いしかり」の到着を見守った。
巡視船が到着した東埠頭(ふとう)には報道陣や関係者100人近くが集まり、取材に応じた神山組合長は「残念な結果となり、家族の方々に申し訳ない」と沈痛な表情で語った。
また、慶栄丸が加わっていた船団の船団長(50)=落石漁協=は「当時の天候は自分の船(19トン)では無理だと思い、出漁を見合わせた。サンマを取っている船同士、人ごとではない」と話した。
慶栄丸と同じ29トンのサンマ漁船で、事故当時、近くの漁場にいたという地元漁師の男性(46)は「しけが来るのは分かっていたが、想像以上。常にホースで水をかけられるような状態で、命の危険を感じた」と振り返った。