ものづくりの街「西帯広」 まちマイ西帯広編
国道38号を挟んで北側に工業団地が広がる西帯広には、ユニークな“ものづくり職人”が店や工房を構えている。全道から注文が来る隠れた人気ショップは、西帯広の魅力のひとつと言えるかもしれない。
(奥野秀康)
■タイヤがつけば何でもOK-オーダーメードの福祉車両専門店「イフ」
西23条北2にガレージがある「イフ」(内藤憲孝社長)は、障害を持つ人や高齢者のため“一点物”の福祉車両や車椅子を作っている。通常、福祉機器はコストダウンのために仕様を絞り込んでいるが、同社の魅力は使う人の事情に合わせて、ガレージで部品を作って願いをかなえてしまうこと。「自分だけの1台を作ってほしい」というオーダーが、全道から来ている。
2003年に創業したイフは、約15年間の間に福祉車両を3000台以上手がけた。人気の秘密は、障害者や高齢者の「夢」をかなえる仕事にある。
例えば、2020年東京パラリンピックのNHK障害者キャスター・リポーターとして全国で活躍する千葉絵里菜さんの電動車椅子は、車椅子と電動機を協力先から取り寄せ、イフが仕上げた。障害を抱えながら積極的に行動する千葉さんのため、新幹線や特急列車内の通路もスムーズに移動できるコンパクトなサイズで、体をしっかり支える車椅子を作った。
現在、手がけている1台の中では「東京ディズニーランドで1日中楽しんでも疲れない車椅子」がユニーク。通常は高強度の布などが使われるが、背もたれ部分をバケットシートに取り替えて体をホールドするようにした。
内藤社長は「『札幌に店を出してほしい』と言われたこともあるが、帯広にいて全道から注文が来ることがうれしい。今後も地元で、顧客の願いをかなえる福祉車両を1台ずつ生み出していきたい」と話している。
■釣り上級者が認める技術-ハンドメイドルアーの工房「コジマクラフト」
サクラマスを追いかける釣り上級者の間では、知る人ぞ知る「コジマクラフト」(小島一郎代表)。玄人でも1日かけて1匹釣れるか、というサクラマスを複数釣ることも可能にするハンドメイドルアーが人気だ。
よく釣れる秘訣(ひけつ)は小島代表が10年以上をかけて研究した水中での動き。ルアーに入れるウエート(重り)を長年の勘にもとづいた工夫をほどこすことで、生きた魚と同じような動きを再現できるという。
2001年に西帯広の自宅に工房を構えた小島さんのハンドメイドルアーは、4年ほど前に大手釣り具メーカーのシマノとコラボした商品で人気に火がついた。現在は北海道、青森の20店舗に卸売りする分を作るだけで精一杯なのだそうだ。
価格は1500~3500円。長さや重さによって、ラインアップが分かれている。「手に入れたい人は、コジマクラフトのホームページから取扱店を見て問い合わせてほしい」と小島さん。「自然豊かで、静かな西帯広で、さらに良いものを作りたい」と言い、「工房の場所はナイショ」だそうだ。
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