喫茶店「アドリア」半年ぶりに営業再開 店主の丹羽さん火事で大やけど
「温かな声に感謝」
昨年8月に火災があった帯広市内の「食事&喫茶アドリア」(西1南10、ローヤルプラザビル1階)が1日、半年ぶりに営業を再開した。火事で大やけどを負い、一時は寝たきりだった店主の丹羽一則さん(63)は店に立てるまで回復。「ビル内の店舗や関係者の皆さんに迷惑を掛けた。お客さんの温かな声に励まされた」と感謝し、初日から来店客を笑顔で迎えた。
同店は1984年に開店し、93年に3代目として丹羽さんが引き継いだ。妻の眞知子さん(63)と2人で切り盛りし、深夜まで営業する市内中心部の喫茶店として愛されてきた。
昨年8月6日未明の火災で店の厨房(ちゅうぼう)が焼け、丹羽さんは背中や両腕、首、頭など上半身に大やけどを負った。「閉店後に天ぷら油が入った鍋を火にかけてから、記憶がない」と言い、現場近くにいた警察官によって救出された。同ビルでは過去にも他店舗で火災があり、「元栓のチェックなどを徹底していた。改めて火災の恐ろしさを感じた」と反省する。
気付いた時は病室のベッドの上。「ピザが焼けているから持って行け」「ハンバーグは届けたか」。寝たきり状態の丹羽さんはうつろな意識で、眞知子さんにつぶやいていたという。
「一度は閉店も考えた」(眞知子さん)が、常連客の励ましを受けて容体が回復し、丹羽さんは今年1月に退院。再オープンを決めた。店は壁を全て張り替えたが、従来の雰囲気は残そうと電球や梁(はり)は再活用して改修した。ランチ営業はやめた。
再開初日は待ちわびた常連客らが集まり、会社員の男性(43)は「皆の憩いの場だった。(丹羽さんが)元気そうで安心した」。頭や腕に痛々しい傷痕、しびれも残るという丹羽さんだが、「調理で体を動かしたり、人とのコミュニケーションがリハビリになる」と前向き。「長く店を続けていきたい」と気持ちを新たにしている。(高津祐也)