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芥川賞作家の池澤さん、「帯広の暮らし 世界を意識」

自身が編集し、刊行が続いている「日本文学全集」などについて語る池澤さん(長尾悦郎撮影)

 帯広出身で芥川賞作家の池澤夏樹さん(69)の講演会が18日夜、帯広市内の北海道ホテルで開かれた。池澤さんは「文学全集の作り方」と題し、昨年から刊行が続く「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」(河出書房新社)の出版経緯や編集過程、自身の文学の目覚めなどについて語った。

 帯広シティーケーブル(OCTV)の開局30周年事業。事前に応募のあった約140人が集まった。

 「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」は、2007年から11年3月まで全30巻が刊行された「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」に続く出版。「世界-」では取り扱わなかった戦前の作品、さらには古典の現代語訳を収め、現代語訳には数々の人気作家が参加している。

 講演で池澤さんは日本文学全集に関し、東日本大震災を機に「日本とはどういう国なのか、日本人とはどういう民族なのかが気になるようになった」と説明。自身も古事記の現代語訳を担当し、「古事記は単純明快で陰影が少なく、展開が早い。スピード感を失わないよう本文中での語句の説明を省き、脚注を付ける方法にした」と話した。

 帯広時代の思い出については「帯広で生まれ、6歳まで帯広協会病院で事務長をしていた祖父と祖母、叔母と4人で病院寄宿舎で暮らしていた。良い思い出しかない」と語り、「東京で暮らしていた母(詩人の原條あき子)を迎えに帯広駅まで行き、そこで見た汽車がきっかけで、線路でつながる先に広い世界が広がっていることを意識するようになった」と語った。

 また、文学や文学全集との出合いは小学生の頃で、実父で作家の福永武彦が小学生になった池澤さんのために手配し、毎月自宅に届くようになった世界文学全集で「世界にはいろいろな人が住み、さまざまな国でできていると認識した」と振り返った。こうした文学全集との出会いや、帯広から東京への移動体験が、翻訳家・作家としての源流であるとした。

 講演を聴いた宮崎如矢さん(69)は「池澤さんの思想が声となって届けられたような、面白い講演会だった」と話していた。

 池澤さんは同日、「『古事記』というヘンな本」をテーマに帯広柏葉高校でも講演し、高校生に古事記の魅力などを語った。(大谷健人)

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  • 自身が編集し、刊行が続いている「日本文学全集」や文学との出会いなどについて語る池澤さん(18日、長尾悦郎撮影)

    自身が編集し、刊行が続いている「日本文学全集」や文学との出会いなどについて語る池澤さん(18日、長尾悦郎撮影)

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