世界最古の貝化石発見 浦幌の活平層に専門家注目
【浦幌】上越教育大の天野和孝副学長らが発見した世界最古となる「ウラホロワダツミフネガイ」など貝化石2新種が採取された「活平(かつひら)層」上部は、国内では数少ない暁新世(ぎょうしんせい、約6500万年前~約5400万年前)の地層。化石の保存状態も良く、今後、調査が進めば、さらに多くの新種の発見をはじめ、約6600万年前に起きた巨大隕石(いんせき)が地球へ衝突した影響の解明にもつながるとみられる。
活平層は、白亜紀から古第三紀にかけた「根室層群」に含まれ、旧北海道開発庁が昭和30年代に発行した地質図では白亜紀に区分されていた。
活平層上部が白亜紀より新しい暁新世の地層と分かったのは「浮遊性有孔虫」の調査だった。有孔虫は単細胞の微生物で、数が多く、種や属によって生存期間が異なり、種の進化速度も比較的速いため地質時代を決める化石として用いられている。
1973年に山形大の吉田三郎氏が有孔虫の調査で根室層群の一部を暁新世と突き止め、84年には、東北大の斉藤常正氏(当時山形大)らが有孔虫の調査から活平層中に白亜紀期末に巨大隕石が衝突した際に形成された黒色粘土層「K-Pg境界層」を発見し、活平層上部が暁新世であることが確定的となった。
また、化石の保存状態が良いのは化石が石灰質団塊中に含まれているため。活平層で長年、化石収集している化石研究家の井上清和さん(55)=帯広市在住=は「細部まで形の残った化石もあり、保存状態としてはかなり良い」と話している。
巨大隕石の衝突では恐竜が絶滅し、海洋ではアンモナイトなどの浅海の生物も壊滅的な影響を受けた。一方、深海底に生息する有孔虫などはかなりの割合で生き延びたとみられる。天野副学長の調査では、活平層上部は水深数百メートルの海底に堆積した地層とみられ、二枚貝や巻き貝の他、単体サンゴ、ウニ・ヒトデの仲間の「ウミユリ」類、二枚貝に似た姿の腕足類などが見つかっている。
天野副学長と共に活平層上部を調べている金沢大のロバート・ジェンキンス助教は「これまで活平層に手をつけてこなかったのが不思議なぐらいだ」と活平層の価値の高さを強調。井上さんは「日本では数少ない地層だけに今後、海外の研究者との共同研究が必要になるのではないか」との見方を話す。
また、足寄動物化石博物館の澤村寛館長は「暁新世を含む古第三紀の海底の地層は世界的にも少なく、活平層の調査研究は意義深い」と述べている。
天野副学長は「古生物の研究者には中生代と新生代の貝化石の専門家がいる。暁新世は新生代だが中生代ともつながる中間領域にあるため、活平層の貝化石は放置されてきたのでは」と話している。(平野明)