69年越しの卒業式 帯広の古屋さんに旧北海中学卒業証書
第2次世界大戦中の海軍入隊などで旧制中学の卒業証書を受け取れずにいた帯広在住の元公務員古屋陽(きよし)さん(86)に、母校の北海高校(札幌市、旧・北海中学)から卒業証書が贈られた。同校や校友会など関係者が古屋さんの思いを受けて準備を整え、古屋さんは69年越しの卒業が実現。伝統校の同窓メンバーに正式に名前を刻み喜んでいる。
古屋さんは1927(昭和2)年、札幌市生まれ。戦局が悪化する中、北海中学4年在籍時の43(昭和18)年に海軍飛行予科練習生(予科練)として土浦海軍航空隊(茨城)に志願入隊した。
同航空隊卒業後には、特攻隊も編成された大井海軍航空隊(静岡)に所属。訓練の日々を送る中で45年8月の終戦を迎えた。
終戦後は父親の仕事の関係もあって帯広へ移住。道開発局職員として定年を迎え、帯広建設業協会事務局長も務めた。
今年4月に開かれた同窓会「北海校校友会十勝支部」(平田利器支部長)の総会で、古屋さんは自己紹介の中で、終戦後の混乱期もあって卒業証書をいまだ受け取っていないことを打ち明けた。この席に来賓として招かれていた山崎省一現校長や校友会本部の役員が古屋さんの思いを受けて準備に動きだした。
旧制中学を予科練入隊のために退学した人に対しては卒業証書が授与されることになっており、当時の在校生の記録を調べるなどした結果、在籍の事実を確認。45年3月31日で卒業したと認められ、同日付の卒業証書が贈られた。
1日、帯広市内の飲食店で開かれた同窓会懇親会の席上で、会員たちが古屋さんのための「卒業式」を行った。校友会の平田支部長から卒業証書を受け取った古屋さんは「卒業式にも出ておらず、証書を受け取っていなかったことが気がかりだった。正式に同窓生と認められた気がして大満足」と感動を語った。
北海高校は道内私立校で最も長い歴史がある。1885年に北海英語学校として開設。1905年に私立北海中学と改称。48年の学制改革で北海高校となった。(大谷健人)
◆北海高校について
・北海高等学校-公式ホームページ