浴場に響くハーモニカ、丸美ケ丘温泉 まちマイ 音更
丸美ケ丘温泉(宝来本通6)に“ハーモニカおじさん”がいる-。同温泉の常連さんからそんなうわさが。聞くと、男湯でハーモニカを吹いている人がいるという。真相を確かめるべく同温泉を訪ねた。
「確かにいました。でもここ数年見えませんね」
女将の後藤公恵さん(73)によると、男性は年の頃70代くらい。10年近く前まで週1回ほどふらりと訪れ、浴場でハーモニカを吹いていたという。後藤さん自身は演奏を聴いたことはなく、客から聞いて存在を知った。「癒やしの場にふさわしい、心を和ませてくれる音色だったそうです」
日帰り温泉では客の個人情報を確かめることはない。毎日、常連もいちげんさんも含め何十人とやって来るが、後藤さんが名前を知っているのは片手で数える程度。おじさんのことも顔は覚えているが、どこの誰かは分からないという。
後藤さんは「出会いも別れも多い商売。いつも来ていたお客さんが突然来なくなるとすごく案じるんです」と語り、「もう一度ハーモニカを聞かせてもらいたい気持ちもあるけど、今も元気にどこかの温泉で吹いていてくれればそれでいい」と男性の健康を願う。
(丹羽恭太)