帯畜大のスミス准教授、ミャンマーで孤児院支援
農業の「自立」必要性訴え
帯広畜産大学准教授のマーシャル・スミスさん(50)=米国カリフォルニア州出身=は、ミャンマーで幼稚園建設や孤児院支援などのボランティアに取り組んでいる。1月28日~今月4日に同国を訪れたスミスさんは、農学教育の充実や子供たちの就学支援など新たな目標を見つけ、「日本の学生も海外ボランティアに関心を持って」と願う
同国の首都ヤンゴンで開かれた獣医学会で講演するために訪れた。講演では、学生がチームで能動的に学ぶ「コラボラティブ・ラーニング(協調的学習)」を獣医学教育に取り入れる重要性を説いた。
学会の合間に、各地の教育事情やこれまで携わった支援先などを視察した。南部デルタ地帯の私学校(日本の大学・大学院相当の学生が通う学校)では、ゴムの木栽培や酪農などに取り組んでいた。大規模農園の実現を目指しているが、同国には農学部のある教育機関がなく、人材が不足している状況で、農学教育の必要性を痛感。「畜大で留学生を受け入れるなど連携を考えたい」とする。
タイとの国境に近いカレン族の村では、昨年も訪れた孤児院と隣接する学校(幼稚園から高校まで)を再訪。米国の国際協力NGOの支援でできた施設で、スミスさんは援助がなくても自立して運営ができるようアドバイスしている。具体的には、施設周辺の6ヘクタールの農地で行っているゴム・果樹栽培、酪農などで収入を得ることを目指しており、4年で自立できるめどを確認した。
スミスさんは今回、孤児院に入所する子供5人の里親を引き受けた。また、大学進学を希望する少年の学費援助を申し出た。「ただ援助を与えるだけではその人を駄目にする」との考えから、援助の代わりに、卒業後2年間は田舎の学校で教えると約束したという。今後は、高校卒業と同時に孤児院を出る子供たちが、大学に行けるようなシステムを考えたいとする。
ヤンゴン近郊にスミスさんが昨年建てた幼稚園では卒園式に出席。この幼稚園は、ボランティアの力を借りながらも自立経営できているという。「お金を出すだけでなく、自分たちのプロジェクトという雰囲気をつくったおかげ」と成果を喜ぶ。
スミスさんはボランティア文化が根付いている米国で育ったため、自身の取り組みを「普通のことだと思う」と話す。これまでにもカンボジアやタイでの難民支援などに取り組んだ経験がある。一方、日本の多くの学生が海外の事情に興味を示さず、学内の留学生と話そうともしないことを残念に思う。「海外ボランティアは私の趣味のようなもので本当に楽しい。学生も同じ経験をして成長してもらいたい。ステップ1として、まずは留学生と交流してみて」と話している。(丹羽恭太)