農に向き合う~農業経営部会会員紹介「上士幌・とかち村上牧場」
1.増頭路線を離れ、変革へ
大規模牧場が連なる上士幌町の北部で、乳牛600頭(搾乳牛420頭)を飼育する。副代表を務める村上智也さん(36)の祖父が1970年に酪農業を始め、父で現代表の靖さんが、1990年代初めからフリーストール牛舎やロータリーパーラーを導入するなどして大規模化を図った。
3代目の村上さんは、北海道立農業大学校(本別)を卒業後、父と共に規模拡大路線の経営を進めていたが、30歳ころ「このままで良いのだろうか」と疑問を覚えた。「規模拡大に伴う設備優先の経営は、牛も人も疲弊する。自分は楽しい酪農をやりたい」。そう父を説得し方向を転換。牛にしっかりと向き合う酪農を軸に、若手の新規就農も支援するなど、特色ある経営に取り組んでいる。
2.つなぎ牛舎5棟を新設
村上さんが行った変革の目玉。それは6年前に新設したつなぎ牛舎5棟だ。1棟60頭用で、各棟にバルククーラーを設置。「つなぎは時代遅れと思われがちだが、牛を丁寧に観察できる」と見直した。棟ごとに担当従業員を配置すると、1頭当たりの乳量が2割アップ。「これは常に同じ牛を管理し、牛の能力を引き出した成果。つなぎ牛舎の仕事は分業ではなく一連で行うため、人材育成にも最適」。現在、搾乳牛の6割がつなぎ。
クラウド牛群管理システムも活用している。例えば、発情や体調不良の牛がいると人工知能が検知。事務所の大型モニタや従業員らのスマートフォンに通知される。村上さんは、「いつでもどこででも牛の情報が一目瞭然。とても役立つ」と笑顔を見せる。
3.異業種の会員と交流できる
同友会農業経営部会に入会したのは3年ほど前。村上さんが、ある経営者セミナーに参加した際、同友会とかち支部の事務局員も居合わせていたことがきっかけ。その後、事務局が村上牧場を訪問し入会を勧めた。「ちょうど異業種の人々と交流し、見識を高めたいと考えていた時。良い機会だと思い入会した」。参加してみて村上さんは、「同友会は有意義な場。会員さんたちとの対話によって、自分の考えは間違ってはいないと再確認することも多い」と話す。
4.夢は酪農家戸数を増やすこと
とかち村上牧場は、新規就農を目指す従業員が、実際に独立できる実力をつけた時には就農支援をし、独立後も連携を惜しまない方針。「農地探しから資金の集め方、乳牛導入まであらゆるサポートをしたい」。
就農支援の目的は、酪農家戸数を増やすためだと言う。「農家が点々と増えていけば、地域経済が活性化する」というのが村上さんの考えで、その実現に向け人材育成に注力する構えだ。
2019年度から新卒1名を採用し、従業員は16名となる見込み。村上さんは、「人材を確保するには牧場名を売ることも大事。その策として、6次化や観光牧場事業にも乗り出したい」と意欲を見せている。
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