とうもろこし(サイレージ用)「TH1475」
道総研北見農業試験場 研究部 作物育種グループ
1.試験のねらい
とうもろこしサイレージは、高栄養自給粗飼料として高く評価されている。輸入穀物価格の変動が大きい近年の情勢に対応し、飼料自給率の向上を図る必要があることから、その重要性は増している。良質なサイレージ原料を確保するためには、各栽培地帯において安定した生産性を発揮できることが重要であり、品種比較試験を行い、優良品種を選定する。
2.試験の方法
とうもろこし(サイレージ用)「TH1475」は、フランスのエールド・エン社が三元交配((フリント × デント)×フリント、構成系統は不明)により育成した一代雑種品種である。平成26年にタキイ種苗株式会社が導入し、平成27年に品種比較予備検定試験を行った。平成28-30年に北見農試、畜試、十勝牧場(平成30年のみ)および北農研(平成30年のみ)において品種比較試験を行った。また、平成29-30年に遠軽町、鹿追町および恵庭市(平成30年のみ)において、同現地試験を行った。さらに北農研において平成27-28年にすす紋病抵抗性に関する特性検定試験を、平成28-29年にごま葉枯病抵抗性に関する特性検定試験を行った。
3.成果の概要
1)早晩性:絹糸抽出期は1-2日遅い(表1)。収穫時熟度は並である。雌穂乾物率は並で総体乾物率は高
い(表2)。北海道統一 RM(総体)*は86である(本試験期間において「KD418」は91、基準品種「チベ
リウス」は85であった)。早晩性は“早生の晩”に属する。
2)耐倒伏性:倒伏個体率が農試平均で18.2ポイント、現地平均で19.0ポイント低く、優れる(表1)。
3)発芽・初期生育:発芽期は同日から1日早く、初期生育は並からやや優れる(表1)。
4)収量性・乾物特性:乾物総重および推定 TDN 収量は並からやや多い(表2)。乾雌穂重割合はやや低く、乾物中推定 TDN 割合は並である。
5)形態特性:稈長は高く、着雌穂高は並である(表1)。
6)耐病性:特性検定試験におけるすす紋病抵抗性は並で、“やや強”である(表3)。圃場試験におけるすす紋病罹病程度は並であった(表1)。特性検定試験におけるごま葉枯病抵抗性はやや低く、圃場試験におけるごま葉枯病罹病程度は並からやや低かった(表1)。根腐病の病徴は認められなかった(表1)。
*北海道統一 RM:種苗会社間で異なる RM を横並びに評価するために作成された早晩性の指標。この数値を参考に安定栽培マップ(収穫適期予測システム)により、個々の圃場ごとに栽培適地や総体乾物率30%到達日を予測できる。ただし、試験圃場数や気象条件により値は若干変動する。また、中晩生品種では試験地点数不足のため、値が公表されていない。安定栽培マップについては「飼料用とうもろこしの利用法別安定栽培マップと新しい早晩性指標の開発」(平成29年指導参考事項)を参照のこと。なお、当該成績において基準品種「チベリウス」の北海道統一 RM は85と提案されている。
4.留意点
なし。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研北見農業試験場 研究部 作物育種グループ 飯田 憲司
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