小粒種ばれいしょの効率的な生産法
十勝農業試験場 研究部 生産システムグループ、地域技術グループ
北海道農業研究センター 大規模畑作研究領域
1.背景と目的
種いも切断作業は春季の大きな労働負担となっていることから、作業を省略又は省力できる小粒種いもの効率的生産が強く求められている。前成績ではシベレリンは収量に影響を及ぼすことなく小粒いも数の増加効果が認められたが、未供試品種への効果や適切な使用法には不明な点が残されていた(「ジベレリンを活用した全粒播種用種いもの効率的生産技術」平成26年指導参考事項)。また、同様の効果が想定されるエチレンについても、ジベレリンとの比較検討が必要とされていた。 そこで本課題では、種いも生産においてジベレリン(10ppm・30秒間浸漬)やエチレン(4ppm8℃1ヶ月貯蔵)を用いて小粒種いもの効率的な生産法を検討するとともに、ジベレリン利用上の留意点を明らかにした。
2.試験方法
1)ジベレリン処理による小粒種いも増加効果
ジベレリンの安定的な小粒種いも増加効果として、処理時期、浴光催芽や栽植密度との組み合わせについて検討し、効果的な栽培条件を明らかにする。
2)ジベレリン及びエチレン処理による小粒種いも増加効果の比較
品種の違いによるジベレリン及びエチレン処理の小粒増加効果の差異を検討する。
3)ジベレリン処理後の取扱いに関する留意点
種いもの乾燥が不完全となる状況を想定して、濡れたまま一定期間放置する処理を行い、薬害の発生を検討し、処理後の取扱いに関する留意点を明らかにする。
3.成果の概要
1)ジベレリンは、前年秋の処理では春処理に比べ小粒種いも増加効果はやや不安定になる可能性があった。
一方、浴光催芽の有無によって小粒種いも増加効果は影響を受けなかった(データ省略)。
2 )標準栽植密度におけるジベレリンの種いも増加効果はS規格110~153%、S+M規格104~120%で、無処理・密植栽培と同等もしくは上回った(表1)。M規格二つ切り及びS規格全粒、いずれの種いもサイズに処理した場合おいても小粒種いもは増加し、また株間との交互作用も認められなかったことから、効果は総じて安定していると推察された。既往の知見も含めて、ジベレリンによる小粒種いも増加効果は多くの品種に当てはまると判断された。
3 )エチレン処理により供試した全品種で小粒種いもの増加が認められたが(S規格101~128%)、その効果はジベレリン処理の方が優っていた(同120~146%)(図1)。
4 )ジベレリン処理後に種いもを濡れたままで放置すると、細い茎が多数発生する等の薬害が発生した(図2)。1日の濡れ期間でも萌芽異常が確認された事例があり、種いも圃場の検疫検査時まで外観上の異常と判断されるおそれがある。
5)以上の結果から、ジベレリン使用基準を一部改訂する(表2)。
4.成果の活用面と留意点
1 )シベレリン処理による薬害を回避するため、処理後は水切りを十分に行い風乾を徹底するなど、使用基準の注意事項を遵守する。
2)平成29年1月現在、ジベレリンの種ばれいしょ以外のばれいしょへの適用拡大は登録申請中である。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
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