ニジマス料理の松久園 2月からテークアウトのみに 芽室
【芽室】大正建築の民家でニジマス料理を提供する芽室町内の松久園(美生、松久大樹代表)は、2月から店舗での飲食を休止し、当面の間、テークアウトのみに対応している。築100年超の民家の冷暖房費の高騰やニジマスの安定的な仕入れが難しくなったことが背景にある。一方で、新たな経営方法を前向きに模索している。(近藤周)
松久園の建物は岐阜から入植した松久代表(52)の高祖父・市治氏が1918年に建てた住宅で、50年代にニジマス養殖を始め、釣り堀として営業。61年にはニジマス料理の提供を開始した。2006年には芽室町の次代へ引き継ぐべき財産「芽室遺産」に登録された。
趣ある空間で提供されるニジマス料理が松久園の魅力。しかし、近年は光熱費の高騰に頭を悩まされた。特にここ3、4年は猛暑により「夏場の営業も厳しくなった」という。
さらに近年は、道内の養鱒(ようそん)場が年々減っているため、店が求める規格のニジマスを安定的に調達することも困難に。最近では1尾を丸ごと使った塩焼きや唐揚げに合う魚がなく、切り身で提供することも。「今までと同じ形で営業を続けることは難しい」と昨年末に決断した。
1月31日、店舗内での最終営業には常連客など約60人が来店。町内の農家、堀江民子さん(71)は「年に3回は、士幌にいる姉妹でここに集まるのが恒例だった。古民家の雰囲気が好きで嫁に来てから40年通っていたので寂しい」と残念がった。松久代表は「突然の決断に、知らなかったお客さんには申し訳なかった」とし、今後はテークアウトで引き続きニジマスの味を届けていく。
64年間、歴史ある松久園での営業を守ってきたが、「忙しさに新しい挑戦ができないというストレスもあった」と松久代表。「やってみたいことはたくさんある」と最近では、松久園の約10ヘクタールある敷地の活用方法を募集したり、同店の広報「にじますぼちぼち通信」を発行するなど新たな挑戦へのアイデアは尽きない。
「うちで何が“売り”かを考えるとやっぱりニジマス料理。もう少し幅を広げて養殖サーモンの活用などを模索しながら、商品開発や提供方法を考えていきたい」と前を向く。伝統を守りながら新たな道を歩きだす、今後の松久園に期待が高まる。