カメラを通して僕を見る男~人の気配
ミュージシャンが絶対に必要とする職業。そう聞くと、音に関係する仕事を思い浮かべる人が多いかもしれない。この連載でも過去に紹介してきた。正解である。
しかし、当然それだけではない。例えば、さまざまな場面で自分の写真が必要となる。アーティスト写真と呼ばれるものからCDのジャケット写真、ライブ写真、また取材などでも、プロのカメラマンがそこにはいるのだ。そこにいるのに、自分の写真が世に出ることは少ない職業。今回は僕の写真を撮り続けてくれているカメラマンを紹介したい。
山川哲矢さんはライブ写真を中心に活動を続けるカメラマン。写真家である。彼と出会ったのはもう15年以上前のこと。とあるライブで、先輩カメラマンのアシスタントとして来ていた。年齢が近いこともあり、仲良くなるのにそんなに時間はいらなかった。当時、リディムサウンターというバンドで活動していた僕は、彼に写真を撮ってもらうことを決め、それは今も続いている。お互いがまだ未完成だったからこそ、ワクワクしながら制作を進め、作品を残してこられたと思っている。特に20代から30代前半に考えていたこと。それは今も忘れたくない感覚である。
お互い40歳前後となった現在でも、大事な時には彼を呼び、写真を撮ってもらう。その写真は彼にしか撮ることができない。別のカメラマンが撮った写真も素晴らしく、優劣のことを言いたいわけではない。彼が積み上げてきた経験、個性、そして僕との関係を通して世に出る写真は、そこにしかありえないのだ。
僕と彼のお気に入りのCDジャケットは一致している。4枚目のアルバム「BREATH」だ。そこに収録されている『Show Respect』を聴きながら過去の作品を眺める。見てもらいたい写真がたくさんある。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。帯広柏葉高卒。Riddim Saunterを解散後、ソロ名義での活動を続ける。V6への楽曲提供が話題になるなか、ニューアルバム『Chase Af-ter』をリリース。12月9日に帯広でのライブが決まっている。