牧場に巨大アート完成 美大進学を目指す高校生の挑戦実る
帯広市内の広瀬牧場(豊西町)に、牛を描いた巨大な壁画がお目見えした。縦3メートル、横15メートルほどで、牛舎で暮らす本物の乳牛をはるかに超えるサイズで存在感を放っている。作品を手がけたのは、帯広三条高校3年の大道彩瑚(あこ)さん(18)。7月末に制作を始め、たった1人で完成させた。
彩瑚さんは美術大学への進学を目指す市内在住の受験生。制作のきっかけは、彩瑚さんの母千春さん(48)と同牧場を営む広瀬靖史さん(49)が高校時代の同級生だったこと。広瀬さんも受験生の子がおり、親同士で受験の話をしているうちに、彩瑚さんが美大を目指していることを知った。
屋外で過ごす牛の風よけとして設置したトタンの壁を殺風景に感じていた広瀬さん。これほど大きな“キャンバス”に絵を描くというのは、貴重な経験になるのではないかと思い立ち、「大きな壁に絵を描いてみないか」と千春さんを通じて提案し、二つ返事で彩瑚さんが応じた。
予備校を二つ掛け持ちし、模擬試験で忙しい中をやりくりして牧場に足を運んだ。もともとは牛と月をモチーフにした絵をイメージしていたが、「人にどう伝わるかを一番に考える」という信条から、そのものずばりの牛を画面いっぱいに描くことに路線変更。「牛の力強さ」をテーマに、油性ペンキで大胆に仕上げた。
完成した作品を前に彩瑚さんは「こんなに大きな作品を作れるとは。制作を通じて勉強ができた」と振り返る。広瀬さんは「スラスラと描いていて、感覚や発想がすごいと思った」と目を丸くした。将来はデザインの仕事をしたいと夢を描く彩瑚さん。「実現に向けて糧になった」と力作の前で胸を張った。(小山田竜士)