十勝川でサクラマスの遡上が急増 降海先の環境向上が要因か
十勝川を遡上(そじょう)するサクラマスが近年、急増している。民間団体の観測では、2016年以降、過去10年の10倍以上に。それに伴い、子であるヤマメも増加した。専門家によると、サクラマスの増加は全道的な傾向で、降海先であるオホーツク海などの生息環境向上が要因とみられている。(高田晃太郎)
道東のサクラマスは、オホーツク海や太平洋での1年間の海洋生活を経て、5、6月ごろ生まれた川に戻り、秋に産卵する。海に降りる前のサクラマスの幼魚と、河川で一生を過ごすものをヤマメと呼ぶ。
十勝川中流の千代田新水路の魚道観察室「ととろーど」(幕別町)で、サクラマスの遡上を目視で数えている十勝エコロジーパーク財団(音更町)によると、15年までは年間100~200匹だったが、16年から1000~3000匹に急増。本流の千代田堰(えん)堤の魚道と合わせると、さらに増えるとみられる。
また、十勝釧路管内さけます増殖事業協会(帯広市)によると、支流の猿別川でも、4年前ほど前から毎年、秋サケに交じって2000匹ほどが捕獲されている(後に放流)。
十勝川水系ではヤマメも増え、釣り愛好家を喜ばせている。かつてヤマメの川として知られた佐幌川(新得町)は近年、外来種のニジマスに置き換えられていたが、同町の佐藤有宏さん(70)は「10匹中2匹はヤマメが釣れるようになった。身近な魚だっただけに復活はうれしい」。帯広市の清野昌高さん(65)も「以前はニジマスしかいなかった札内川や戸蔦別川のポイントで、ヤマメがかかることが増えてきた」と語る。
十勝川でサケ科を調査してきた道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場(恵庭市)の卜部浩一研究主幹は、沿岸でのサクラマス漁獲量は日本海側を除き全道的に増えていると指摘。オホーツク海から太平洋にかけて餌量が豊富で、サクラマスが好む水温になっていることが要因という。
さらに、07年にできた千代田新水路の魚道が、本流の魚道より勾配が緩やかなため、遡上をしやすくした可能性がある。卜部研究主幹は「1000匹以上のサクラマスが遡上する河川は道内でも少ない」とし、「十勝川の規模なら、1万匹以上がいても不思議ではない」と話す。
サケ科。体長30~70センチ。雄の約半分は一生を河川で過ごすのに対し、雌はほぼ全てが海へ下る。道内の河川では通年で捕獲が禁止されており、ヤマメも降海時期の5~6月は禁漁(十勝地方)。